過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

眠れに入るまさにその瞬間、恐怖感が訪れる

それまで眠れないことは、よくあることで、「まあ、仕方がない、いつか眠れるだろう」という程度ですんでいた。

それが、睡眠薬を絶ったときから、いつもと様子が異なってきた。
「眠れない」という恐怖感に襲われるのだ。

あ、眠りに入るな……、という瞬間がある。その瞬間、うわっ眠れない、というすごい恐怖感が訪れる。あたかも暗黒の淵に引きずり込まれそうな恐怖なのだ。

この恐怖感から、また飲みだしてしまう。そして、疲労の日々がつづく。また、絶つ。そして、また恐怖感が訪れる。そんなことを繰り返していた。

そして、三週間目。「とにかく絶つ! ぜったいに飲まない」ときめた。「ずっと眠れなくてもいい、どうあっても、断つ」と。

それから数日は、つらくて恐怖の日々があった。が、どうなってもいいと飲まなかった。やがて恐怖感はなくなっていった。以来、睡眠薬は飲まない。そして恐怖感もない。

いまでも眠れない日はよくあるが、あの恐怖感を思えば、いくら眠れなくても大したことはない。

友人の旦那が首をつって自殺した。長い間、ずっと不眠症で、寝るのが怖い、横になって寝るのが怖いと言っていたという。

眠るために寝なくちゃいけない、でもそれが怖いというのは、たいへんなつらさだったろう。その心労のほんの一分がわかるような気がした。