過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

エスト(est)の体験

エスト(est)の体験】
①「ある」とはなにかの探求
②みなさん、みえますか。この人の概念の海が。
③わからないという不安とともにる、それが突破になった
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エスト・トレーニング(est)というセミナー体験。当時は、「フォーラム」といっていた。
ワーナー・エアハードがつくったトレーニング法。
エアハード・センスィティブ・トレーニングの略だが、エストとはessence(本質、であるということ)の意味も含めていると思う。

セミナーの目的は「人間の探求」「人間であるの〝ある〟の探求」というものだった。32歳の頃、受講した。自己啓発セミナーが流行していた時代だ。
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トレーナーはたった一人。ハワイで医者をしていたという女性。受講生は200人くらい。朝から夜まで徹底した問答のみ。トレーナーが問いかける。受講生がなにか答えたり反論する、そしてまたトレーナーが質問する、そして答える‥‥えんえんとやる。一対一だから、他の人は聞いているだけ。
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私は、いろいろごちゃごちゃと反論したり、問答をよくしていた。頭でっかちで考えることが大切という生き方をしていた時代だ。

──デカルトの言うように、我思う故に我あり、自分が考えているということが自分の本質と思います。

「あなたは、考えることが自分の本質と思っている。では、自分で自分の考えを止めることができますか?」
──え?‥‥いや、できません。

「できないのなら、それは自分のものではありませんね。考えは自分ではない、わかりますか?」
──わかりません。何をいっているのかさっぱり。

以後、どうたらこうたら、えんなえんとやりあう。他の受講生から「もうやめなよ」と声が出る。わたしはすこし怯んでやめようとした。自分のために時間を奪っているような気がして。

「あなたは、いま他の人から言われてやめるようにしましたね。それに気づいていますか?」
──え?はい、気づいています。
「どうしてやめたのですか」
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ストーリーよりも、それを生み出すコンテクスト(文脈)を問うてくる。そして、とっさにあらわれる反応、そのメカニズムに踏み込んでくるのだ。以後、えんえんと問答が続く。

すると、トレーナーが受講生たちにこう言った。
「みなさん、みえますか。海が。この人の概念の海が。この人は、いかに日常の暮らしの中で、目の前のことに生き生きと挑戦していないか、冒険していないか。それがわかりますか?聞こえますか?」

とにかく、まったくなにをいっているのかわからなかった。わかろうとするから、よけいにわからなかった。なにがどうわからないのかすら、わからなかった。
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トレーナーから「わからないという不安とともにいなさい」と言われた。
それが、わかってきたのは数年後だった。とくにインドの放浪で冴え渡った。

自分にとっては、estはものすごいきっかけになった。「であるべき」という固定観念を持たずに暮らすことのダイナミズムを体感した。
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私が思うに、estの背景には、原始仏教の教えがあり、さらには、サイエントロジーがあり、エサレンの成果がある。くわえて、アメリカのプラグマティズム。ワーナーのビジネスマンとしての優秀な力があった。

原始仏教、すなわち無我というところがベースにあるなあと思われた。無我=無常。
瞬間瞬間、変化してやまない。すべてのものが。自分自身も。それこそがリアリティ。
それはある意味では、とても創造的なこと。どんな状況も変化するから、ブレークスルー(突破)できる。
ブレークスルーのための大切なことは、コミットメントであり、コミュニケーション。とくにestでは、ことばの力が自分を引っ張るという。コミュニケーションで解決できないものはない、と。
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estは、宣言ということを言っていた。宣言は根拠がなくてもいい。たとえば「やる」というだけ。その言葉が自分を引っ張ってゆく。
自分が機関車だとしたら、自分でレールを敷きながら、自分で内燃機関を燃焼させながら、自分という機関車を動かす、と。
「コミュニケーションで解決できないものはない」というのは、ひとつの宣言。そういうあり方。
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estは他の自己啓発セミナーとちがって、圧倒的に深淵だった。
であるがゆえに、なにを言っているのかわからない。わからない、わからない、わからないでずっと来ていた。が、それが実は突破の道でもあった。

たとえば、宗教は、わかったと思ってしまうところで詰んでしまう。教義とか教学やると、いちおうわかったと思いこむ。
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しかし、まったくわからない、わからないというのはまったくわからない、それが自分を引っ張ってくれる。可能性を開いてくれる。突破がある。
わからないってところが、可能性を開いてくれる。突破がある。このあたりのコツがわかっただけで、estは大収穫だったかな。