過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

自己破産物件

──もしもし、○○弁護士事務所の○○です。ご提示の物件のですが、債権者との調整、権利関係が複雑なため時間がかかっています。いちおう、途中経過ということでご報告いたします。

土地は200坪ある。「1万円なら買わせてもらいます」と弁護士に伝えていた。

自己破産した方の土地の任意売却だ。(住宅ローンの返済が困難に、金融機関に相談のうえ家を売却。債権者の同意が必要)

袋井の駅から徒歩10分。おちついた住宅街で、見晴らしはいい。日当たりはいい。
そんな条件のいい土地を、一万円で売ってくれる訳がないではないか。
  ▽
だが理由がある。

自己破産物件だ。破産者の財産の換価処分権限は破産管財人に帰属する。その担当が弁護士。破産管財人の弁護士としては、資産を早く処分してしまいたい。

しかし、いろいろ問題ありの土地。タダでもらったもいけない土地かもしれない。

①急な傾斜地。しかも農地(宅地に変更するのは、農地法の制限で手間がかかる)。雑木が茂って野菜などとても栽培できない。土地の上がお寺の墓がある。宅地に農転したとしても、建築には擁壁など多額な費用がかかる。

②どうもあの山自体が古墳のようだ。そうなると、宅地造成中に遺跡が出土するとも工事はストップ。発掘調査の費用は土地の所有者(開発者)が負担させられる。

③いちばんの懸念は、地震や風水害があって土砂が崩れれ公道に土砂が堆積したり民家を破壊すると土地所有者に責任が及ぶ。

古紙回収センターの用地などに利用できないかとも考えた。しかし、難しそう。ということで、ほとんどメリットがない。けれども、いわばゲーム感覚で関わってみているのだ。

ちなみに、自己破産についてまとめてみた。

①事業が行き詰まり、資金繰りが苦しくなると、自己破産するケースが多い。親しい出版社も、近所のレストランも、自己破産した。

②自己破産すると、そこでゲームは完了。もう借金からは解放される。もちろん、債権者に対する責任はあるのだが。

③自己破産を申請すると、裁判所が破産管財人を選任。法人の資産は破産管財人の管理下におかれる。

破産管財人は、任意売却で資産を切り売り。公開入札して競売され、その金は債権者に支払われる。

⑤売れない(換価できない)資産も残る。それは、どうなるのか。

⑥元の所有者に返すといっても、すでに法人は消滅している。資産は宙に浮いてしまう。破産財団は解散している。

⑦破産した法人の資産であった土地・建物を、買いたいという者が現れた時、どうなるのか。

破産管財人とやりとりしてみた。すでに破産財団は解散しているが、売買は可能だという回答。

⑨破産財団は解散しても、清算法人として継続しているのだろう。

⑩その収益は、滞納している税金の支払い、債権者があれば、分配される。

法的根拠:破産管財人は破産裁判所の許可を得て、換価不能財産を破産財団から放棄する(破産法78条2項12号)。破産により解散しているが、清算の目的の範囲内ではなお清算法人として存続している(会社法476条)。

⑪ちなみに、自己破産した法人(200人が入れる料理店と重量鉄骨3階建てのパチコン店:7年前に自己破産)の建物は、「ぜんぶで10万円でもいい」と言われた。借地なのでややこしいので止まっている。

また。知人の自己破産した出版社の書籍(池谷制作も入っていた)は一冊10円〜100円でいいということですべて処分された。