「おとうちゃん。これかきたい?」
──いや、いまいそがしいから、あとで。
「だめだよ。〈いま〉しかないんだよ」
「いましかない」という言葉に、はっと気づいて、それはそうだと一緒に工作する。
折り紙を折って切り抜いて、幾何学模様を作った。
あかりは気に入ってくれた。
「糊付けして、絵本にしよう」
いくつかの折り紙を貼り付けて、本みたいにした。
「お父ちゃん読んで」
たんに折り紙を貼っただけのものだ。
──それじゃあ、よむね。
むかしむかし、あるところに、あかりちゃんとお父ちゃんが住んでいました。ふたりとも仲良く遊んでいました。はい、おしまい。
「だめー、もっと続けて」
──ええ?もっと読むの? そしたら、あかりちゃんは、歌をうたい続けて、森のなかに入っていきました。そしたら、くまさんがやってきて、やあ、あかりちゃん。
……以下、えんえんとつづく。
「もっと本作ろうよ」
──うん。
疲れて、うとうととする。
「おとうちゃん、ちゃんと目をあけて!」
──はいよ。
「秘密基地を作って、そこに本棚を置いて。お父ちゃんとあかりちゃんの絵本を置こうよー」
以下、えんえんと物語は続くのだった。