過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「敗北を抱きしめて」(ジョン ダワー著 岩波書店)から引用

「人間」のありようを示している事実。この本が、戦後のありようをしめしていて、とてもおもしろい。
以下、「敗北を抱きしめて」(ジョン ダワー著 岩波書店)から引用。
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降伏よりも大きな恥はないというのが、当時の教えであった。戦火が本土に近づくと、非戦闘員も最後の最後まで戦い、「玉砕」して死ぬのだと教え込まれた。

しかし天皇の放送のあとで本当に砕け散る玉の道を選んだ者の数は、予想よりも少なかった。

数百人――その大部分は軍人――が自殺したが、この数は、ドイツが降伏したとき自殺したナチス将校の数とほぼ同じである。ただし、日本とちがって、ドイツには国を愛するがゆえに自殺するという狂信的な考え方は存在しなかったが。

実際、天皇による八月一五日の重大放送の直後、政府組織のレベルで起こった目立った行動は、きわめて実際的で、自己保全をねらったものであった。

全国の軍将校や文民官僚たちは、書類を焼き捨てたり、軍の貯蔵物資を密かに売却する仕事に没頭した。天皇の放送でアメリカの空襲は終わったけれども、東京の空はそのあと何日も煙で暗かったなどと、少々誇張を混じえて言われたものであった。

主人である天皇の先例にならって、戦争を率いたエリートたちは戦争中の自分たちの行為をなんとか隠すために書類を燃やした。その焚き火が、焼夷弾の火の海にかわって東京の空を暗くしたというのである。
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引用終わり。