過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「特殊慰安施設協会声明書ならびに設立趣意書」終戦の3日後

特殊慰安施設協会声明書ならびに設立趣意書」である。
なんと終戦の詔(玉音放送)の3日目だ。

敗戦になった。アメリカ占領軍がやってくる。女たちは強姦される恐れがある。そこで、その緩衝装置として米兵相手にセックスを提供する施設を作ろうということだ。

以下、なかなかの名文。このように、飾り立て荘厳に見せる文の達人はたくさんいた(笑)。
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邦家三千年山容河相相革むるなしと雖も、大日本の生命は、昭和20年8月15日の慟哭を一期とし、極まりなき悲痛と涯しなき憂苦とに縛られ、危くも救い難き絶望のどん底に沈淪せんとす。

特殊慰安施設協会声明書ならびに設立趣意書」である。
なんと終戦の詔(玉音放送)の3日目だ。

敗戦になった。アメリカ占領軍がやってくる。女たちは強姦される恐れがある。そこで、その緩衝装置として米兵相手にセックスを提供する施設を作ろうということだ。

以下、なかなかの名文。このように、飾り立て荘厳に見せる文の達人はたくさんいた(笑)。
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邦家三千年山容河相相革むるなしと雖も、大日本の生命は、昭和20年8月15日の慟哭を一期とし、極まりなき悲痛と涯しなき憂苦とに縛られ、危くも救い難き絶望のどん底に沈淪せんとす。

晨、醒めては涙あり、夕、臥床に入りては魂痛む。 15日より此方一日を重ねる毎に、身体萎え衰え、骨削られ細るの念い、一億同胞一人の例外あるべけんや。

宮城外苑二重橋御前に跪坐号泣する姿、感堪え得ずして赤腸を捧げ屠腹する者、嗚呼、世界に冠たる忠誠義魂、疑つては百錬の鉄となり。

発しては万朶の桜となるべきに、今、痛みに痛みて憂愁天地を蔽う。

然りと雖も翻つて考うるに、神州は断じて不滅なり。 我等今徒らに泣き悲しみ、望みを失い、方途に迷うべき時に非ず。

悠久の祖宗に詫び、久遠の子孫に謝するの途、只一途、天地を薄愁の黒雲を打破り、我等が前途に光明の一道を見出し、承詔必謹御心に帰一し奉りて、遠き道を孜々と歩き、民族の生命を悠久の彼方に培養して他日を期するにあるべきなり。

大観すれば、一切は天の命にして、陰極まれば陽を発し、陽極まれば陰となるの理、古今を通じて謬りあるべからず。

大艱苦の長き道こそ、不壊の大栄光へ通ずべきの理、亦、自ら明らかなり。 天の我等を試練し賜うこと苛烈を極むれば極むる程、我等に援け賜う天の命の、亦、偉大なるを念い、我等一億同胞今こそ真に一致団結、不抜の大勇猛心を奮い起こして、長き大試練の途に発足すべきなり。

銘記すべし8月15日、忘るべからず此痛苦、而して溢るる涙を抑え、湧き上がる悲しみに堪えて之れを激励と、鼓舞と、隠忍の糧とすべきなり。
(中略)
昭和のお吉、幾千人か人柱の上に、狂瀾を阻む防波堤を築き、民族の純潔を百年の彼方に護持培養すると共に、戦後社会秩序の根本に、見えざる地下の柱たらんとす。
(中略)
「声明を結ぶに当り一言す。我等は断じて進駐軍に媚びるものに非ず、節を枉げ心を売るものに非ず、止むべからざる儀礼を払い、条約の一端の履行にも貢献し、社会の安寧に寄与し、以て大にして之を言えば国体護持に挺身せむとするに他ならざることを、重ねて直言し、以って声明となす。
市川房枝編解説『日本婦人問題資料集成第1巻 人権』(ドメス出版)よれ
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「国体護持に挺身せむ」「幾千人か人柱」と。「昭和のお吉」というのは、幕末の頃、アメリカ駐日総領事・タウンゼント=ハリスに差し出した芸妓の名前だ。

以下「敗北を抱きしめて」(ジョン ダワー著 岩波書店)を参考にした。
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大蔵官僚(後の首相)池田勇人は、このとき政府側の手配に活躍し、後に「一億円で純潔が守れるなら安いものだ」と言ったと伝えられている。

このときの業者たちは、濡れ手に粟で国に奉仕できる好機に恵まれたことに感謝して、皇居前に集結し公然と「天皇陛下万歳」と叫んだ。水商売専門の七団体も声明を出して、「一億の純潔を護り、以て国体護持の大精神」への忠誠を厳粛に誓っている。

8月18日、內務省は全国の警察管区に秘密無電を送り、占領軍専用の「慰安施設」を特設するよう指示した。施設に入れる女性の調達には地方の警察署長があたり、地元の売春業者や関係者を動員すべしとされた。

副総理の近衛文麿は、この緊急案件の指揮を警視総監みずからとってほしいと要請した。

事業を請け負うよう勧められた業者は、公認官庁として内務省、外務省、大蔵省、警視庁、東京都の名前をあげた回覧チラシを作って、民間からの投資を募集した。政府運営の勧業銀行(後の第一勧銀、いまはみずほ銀行)は、政府融資のうち2000万円余りを前払い金として払い込んだ。

特別慰安所の設立者たちは一般女性を募ることにし、東京の中心の銀座に「新日本女性に告ぐ」と書いた巨大な看板を立てた。「戦後処理の国家的緊急施設の一端として、進駐軍慰安の大事業に参加する新日本女性の率先協力を求む」とあり、「女性事務員、年齢一八歳以上二五歳まで。宿舎、衣服、食糧支給」とも記されていた。(引用終わり)
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つねにでてくる「国体護持の大精神」。
民主主義も、平和主義も、こうした慰安施設も、すべて「国体護持の大精神」。

こうして、官僚たちがなにもかも主導するのだが、アメリカ占領軍もまた、間接統治で、官僚たちをつかって支配する。その構造は、現在も続いているのだと思う。

晨、醒めては涙あり、夕、臥床に入りては魂痛む。 15日より此方一日を重ねる毎に、身体萎え衰え、骨削られ細るの念い、一億同胞一人の例外あるべけんや。

宮城外苑二重橋御前に跪坐号泣する姿、感堪え得ずして赤腸を捧げ屠腹する者、嗚呼、世界に冠たる忠誠義魂、疑つては百錬の鉄となり。

発しては万朶の桜となるべきに、今、痛みに痛みて憂愁天地を蔽う。

然りと雖も翻つて考うるに、神州は断じて不滅なり。 我等今徒らに泣き悲しみ、望みを失い、方途に迷うべき時に非ず。

悠久の祖宗に詫び、久遠の子孫に謝するの途、只一途、天地を薄愁の黒雲を打破り、我等が前途に光明の一道を見出し、承詔必謹御心に帰一し奉りて、遠き道を孜々と歩き、民族の生命を悠久の彼方に培養して他日を期するにあるべきなり。

大観すれば、一切は天の命にして、陰極まれば陽を発し、陽極まれば陰となるの理、古今を通じて謬りあるべからず。

大艱苦の長き道こそ、不壊の大栄光へ通ずべきの理、亦、自ら明らかなり。 天の我等を試練し賜うこと苛烈を極むれば極むる程、我等に援け賜う天の命の、亦、偉大なるを念い、我等一億同胞今こそ真に一致団結、不抜の大勇猛心を奮い起こして、長き大試練の途に発足すべきなり。

銘記すべし8月15日、忘るべからず此痛苦、而して溢るる涙を抑え、湧き上がる悲しみに堪えて之れを激励と、鼓舞と、隠忍の糧とすべきなり。
(中略)
昭和のお吉、幾千人か人柱の上に、狂瀾を阻む防波堤を築き、民族の純潔を百年の彼方に護持培養すると共に、戦後社会秩序の根本に、見えざる地下の柱たらんとす。
(中略)
「声明を結ぶに当り一言す。我等は断じて進駐軍に媚びるものに非ず、節を枉げ心を売るものに非ず、止むべからざる儀礼を払い、条約の一端の履行にも貢献し、社会の安寧に寄与し、以て大にして之を言えば国体護持に挺身せむとするに他ならざることを、重ねて直言し、以って声明となす。
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「国体護持に挺身せむ」「幾千人か人柱」と。「昭和のお吉」というのは、幕末の頃、アメリカ駐日総領事・タウンゼント=ハリスに差し出した芸妓の名前だ。

以下「敗北を抱きしめて」(ジョン ダワー著 岩波書店)を参考にした。
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大蔵官僚(後の首相)池田勇人は、このとき政府側の手配に活躍し、後に「一億円で純潔が守れるなら安いものだ」と言ったと伝えられている。

このときの業者たちは、濡れ手に粟で国に奉仕できる好機に恵まれたことに感謝して、皇居前に集結し公然と「天皇陛下万歳」と叫んだ。水商売専門の七団体も声明を出して、「一億の純潔を護り、以て国体護持の大精神」への忠誠を厳粛に誓っている。

8月18日、內務省は全国の警察管区に秘密無電を送り、占領軍専用の「慰安施設」を特設するよう指示した。施設に入れる女性の調達には地方の警察署長があたり、地元の売春業者や関係者を動員すべしとされた。

副総理の近衛文麿は、この緊急案件の指揮を警視総監みずからとってほしいと要請した。

事業を請け負うよう勧められた業者は、公認官庁として内務省、外務省、大蔵省、警視庁、東京都の名前をあげた回覧チラシを作って、民間からの投資を募集した。政府運営の勧業銀行(後の第一勧銀、いまはみずほ銀行)は、政府融資のうち2000万円余りを前払い金として払い込んだ。

特別慰安所の設立者たちは一般女性を募ることにし、東京の中心の銀座に「新日本女性に告ぐ」と書いた巨大な看板を立てた。「戦後処理の国家的緊急施設の一端として、進駐軍慰安の大事業に参加する新日本女性の率先協力を求む」とあり、「女性事務員、年齢一八歳以上二五歳まで。宿舎、衣服、食糧支給」とも記されていた。
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つねにでてくる「国体護持の大精神」。
民主主義も、平和主義も、こうした慰安施設も、すべて「国体護持の大精神」。

こうして、官僚たちがなにもかも主導するのだが、アメリカ占領軍もまた、間接統治で、官僚たちをつかって支配する。その構造は、現在も続いているのだと思う。