あかりが、「パン屋さんごっこやろう」という。
──はい、ドーナツパンね。はい、ぐるりんぐるりんパン。
──お客さんのところに、パンを届けてね。
「はーい」。
──あれれ、お金はもらってきたの。
「あ、忘れてた」。
「はーい。もらってきた」。
などとやっているうちに、あかりは紙にお金をたくさん書いて、「はい一千万円」とかやりだした。
それをみてて、国家経済というものを考えた。
国家予算、何十兆円といっても、お金を刷るわけでもなく、現金を持ち運ぶわけでもない。データとしてのお金をはい、はいと口座に移すだけ。
お金は、金(きん)の裏付けがあるわけでもない。日銀がそのお金を、ちゃんと印刷しているのかどうか、ぼくにはわからない。
まあ、ともあれ、「国家」というのはすごいな。
自分でお金を発行できる。原資はほとんどゼロ。
そして、そのルールを自分で決められる。人を動かすルールを作れる。拘束したり、強制的に働かせたり、人殺しの戦争にいかせることもできる。
つまるところ、国家ってなんだろう。あかりとままごとをしながら考えたのだった。