過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

かくれんぼにごっこ

あかりとお風呂でかくれんぼ。
「おとうちゃん、かぞえて。もういいよ、というまで」
──はいよ。いち、に、さん、しー、ごー。もういいかい?
───ろく、しち、はち、……。もういいかい。?
「もういいよ」。
なにしろ風呂場だから、隠れるところはない。おとうちゃんの後ろに隠れた。それはわかっている。しかし、わからないそぶりをしなくちゃいけない。
───あれ、あかりちゃんがいない。どこいったのかなあ。
すると、うしろから、「わーーっ」と、おそいかかってくる。
──うわっ、びっくりしたぁ!
と、おどろくことにした。
かくれんぼというよりも、かくれてみつかりそうな瞬間、オニに襲いかかって驚かすというゲームになっている。
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かくれんぼだけではおもしろくない。オニに見つかった瞬間、逃げておにごっこになるという「かくれんぼにごっこ」なのだ。
あるいは、探しているオニを、隠れたところから突然、出現して、びっくりさせるゲームでもある。
おとうちゃんが、かくれんぼばかりじゃおもしろくない。いろいろ面白い工夫をしようということで、無法のかくれんぼになっているのだった。
ルールがあるような、ないような。でも、「瞬間瞬間、それになりきる」というゲームでもある。
子どもとはいつもゲームを創作していくところが、たのしい。また、そうでないと、おとうちゃんは続かないのだ。
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先に風呂から出ると、あかりは「うわーっ」と、泣き叫んでもどってきた。これは迫真の演技じゃなくて、そのものだ。
クモがいたのだった。あかりは、クモが大嫌いで怖がる。
───だいじゅうぶだよ。クモさんは、あかりちゃんをいじめないよ。なかよくしたいんだよ。
そう言っても、
「だって、クモだもの。クモはこわいの、きらいなの」
泣いてしがみついてくる。
こうした時間は、黄金の宝の時間。そう思って大切にしなくちゃと、いつも思う。だが、なにしろ体力がいる。へとへとになるのだった。