過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

日蓮の立正安国論

「近年より近日に至るまで、天変地夭・飢饉疫癘・遍く天下に満ち、広く地上に迸る。
牛馬巷(ちまた)に斃(たお)れ骸骨路(みち)に充てり。死を招くの輩(やから)既に大半に超え、悲まざるの族(やから)敢て一人も無し。
……是れ何(いか)なる禍(わざわい)に依り是れ何なる誤(あやまり)に由るや」
日蓮が38歳のときに著した『立正安国論』の書き出しである。日蓮はこの書を、北条時頼鎌倉幕府第5代執権)に提出した。
表現はややオーバーかもしれないが、「牛馬巷(ちまた)に斃(たお)れ骸骨路(みち)に充てり」というのは、日蓮が見た悲惨な現実そのもの。
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日蓮は論証していく。いったいなぜ、このようなことが起きたのか、と。
それは、国土を守護する「諸天善神」(しょてんぜんじん=いわば、守護霊団)が去ってしまったからだという。「神天上の法門」という。
では、どうして「諸天善神」が去ったのかというと、「正しい教え」(日蓮にとっては『法華経』)が行われず、諸天善神が、そのエネルギーを得られないからだという。
諸天善神=神々=心霊、守護霊団が、国土を守る。帝王の徳がないときには、それらが離れる。
悪法がひろまると、ますますかれらは離れる。そのことで、国土に、飢饉、疫病、内乱、他国からの侵略が起きるという視点であね。
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これは、日蓮のオリジナルではなく、護国経典(薬師経、仁王般若経、金光明経)などに記載されていることだ。
経典にある「国土乱れん時は先ず鬼神乱る。鬼神乱るるが故に万民乱る」という言葉はインパクトがある。
「鬼神乱る」というのは、さながらコロナウィルスのパンデミックのようだ。ウィルスという鬼神が乱れることで、人心が乱れ、万民が乱れる。そこに、争いが起き、飢饉が起き、寺院や風水害も起きる。
以下、それらの経典を引用してみる。
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無量の国土を守護する諸大善神有らんも、皆悉く捨去せん。既に捨離し已りなば、其の国当に種種の災禍有つて国位を喪失すべし。一切の人衆皆善心無く、唯繋縛殺害瞋諍のみ有つて互に相讒諂し、枉げて辜無きに及ばん。
疫病流行し彗星数ば出で、両日並び現じ薄蝕恒無く黒白の二虹不祥の相を表わし、星流れ地動き井の内に声を発し、暴雨・悪風・時節に依らず、常に飢饉に遭つて苗実成らず。
多く他方の怨賊有つて国内を侵掠し、人民諸の苦悩を受け、土地所楽の処有ること無けん。(金光明経)
国土乱れん時は先ず鬼神乱る。鬼神乱るるが故に万民乱る。
賊来つて国を刧かし百姓亡喪し臣・君・太子・王子・百官共に是非を生ぜん。天地怪異し、二十八宿・星道・日月時を失い度を失い多く賊起ること有らん。(仁王経)
一には穀貴・二には兵革・三には疫病なり。一切の善神悉く之を捨離せば其の王教令すとも人随従せず。常に隣国の侵嬈する所と為らん。(大集経)
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日蓮は言う。「正しい教え」(日蓮にとっては『法華経』)を弘めることによって、諸天善神が国土に戻り、国土は守護される。もしも、それが行われなければ、さらなる災難(自国内での同士討ち、他国の侵略)が起きると予言した。
なので、「悪法である念仏を禁止せよ」という。このあたり、かなり問題があるが。結果、そのことで、日蓮はさまざまな迫害を受けることになる。
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この話を友人の真言宗の坊さんにしたら、かれはあちこちの神社に出かけては、仁王経の護国品をよんでいるという。そんな坊さんは、たぶんほとんどいないと思う。かれに、この「立正安国論」の「神天上の法門」の話をしたところであった。