過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

おぶさりながら、「お月さまきれいだねえ」

あいかわらず、「追いかけっこしよう」「鬼ごっこしよう」「おんぶー、肩車」と迫ってくるあかり。
───いそがしい、仕事があるんだから。
そう言っても許してくれない。泣く子と地頭には勝てぬとは、よく言ったものだ。甘やかしすぎだが。
 
───じゃあ、追いかけっこしようか。
まあ、雨の日だ。運動不足にちょうどいい。施設は広いので、スロージョギング。ぐるぐると回る。
 
──次は、鬼ごっこやろうか。
いつも、お父ちゃんは隠れる役目だ。見つかりそうで見つからない場所を探して隠れる。すぐに見つけられてしまう。
次に、まず見つからない場所に隠れる。押入れの中とか。
「もういいかーい?」
──もういいよ。
「もういいよ」を何度も言うが、あかりは見つけられない。
さらに、なんども「もういいよ」と言うと、やっと見つけてくれた。
 
あかりは、押し入れの中が気に入って、「ここいいねえ。一緒に隠れようか」ということになった。
──あれれ。一緒に隠れたら、鬼ごっこにならないじゃないか。
そう言うと、「お母ちゃんに見つけてもらうから」と。
──じゃあ、お母ちゃんに探してもらうように言ってきて。
あかりは、お母ちゃんを呼びに行く。そして、また一緒に隠れる。
 
こうして、二人で隠れていると、共有体験というのが起きて楽しい。こんな体験が、いつまでできるか。
共通の敵というのか、この場合、鬼の役目のお母ちゃんから、いかに身を隠すかというところで、ワクワクするらしい。
 
やっとさきほど、おんぶして、家まで連れて行った。
──ほら、お月さまだよ。
雨もやみ、天空には、煌々と輝き渡る満月が。おぶさりながら、「お月さまきれいだねえ」とあかり。