過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

【あかりとの対話】2025.11.23

【あかりとの対話】2025.11.23

夕方、あかり(娘10歳)がやってきた。

限界集落」というミュージカル劇団の稽古の帰りに寄ってくれた。12月には山奥の佐久間町で公演がある。今回で舞台を踏むのは三度目になる。 本番を経験するのは、得難いこと。いい学びの機会だ。

お父ちゃんはもう布団に入って寝ていた。

というか、近頃は、ほとんど寝たきりの暮らしになっている。

あかりは枕元に座る。

「お父ちゃんの布団、あったかいね。」

「そうだね。ずっと寝ていたからね。温まっているんだ。」

今のおとうちゃんの体調や状況を、あかりはよく理解しきれてはいない。でも、ただそばに座るだけで十分だと知っている。というかそれが自然だ。

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「そうだ、あかり、算数やろうか。」

「ええ?算数?」

「算数というよりパズルだよ」

ということで、テープ図を使った考え方を始めた。お父ちゃんは寝ながら教えるので、ボールペンで紙にうまく描けない。

算数は10進法だ。

小1のなさから学校入ってないので、「桁の繰り上がり」の根本がわかっていないのかもしれない。

桁の繰り上がりが視覚的にわかれば、2進法も12進法も60進法も理解できるようになる。

面積の計算にしても、単に縦横を掛け算して終わりではなく、それがどういう意味を持つのか。数字のイメージをぱっと視覚化できるということが大事なんだろうなぁ。

「知識をパターン化して覚える」のではなく、世界の見え方のアプローチってところかな。

今度は、碁石を使って算数の考え方にチャレンジしてみよう。

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「おとうちゃんの文章、ちゃんと読んでいるよ。楽しみにしているよ」

「それはうれしいね」

「ここの文章は最後、ぼーっと満月が出ているって結ばれているけど、なんか怖いね。」

「怖い心霊話の結びだからね。印象的だね。作り話じゃなくて、山の上に実際に月が出ていたんだよ。こうやって文章は締めくくりを印象的にするのも大事なんだ。余韻を残すというかね。

最初の書き出しは、〝これはなんだ!〟みたいに、びっくりするようなことを持ってくる。まあ、客引きみたいなものかな。最後は何か余韻を残しておく。そんなところが文章のポイントだよ。」

そんな話をしたのだった。