過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

手漉き和紙の大城さんは彫刻もされていた

「本を6冊ほしいんで、もってきてもらいたいんだがのぉー」
手漉き和紙の大城忠治さんからの電話。
「過疎の山里に暮らす普通なのに普通じゃないすごい90代」(すばる舎)を届けに行った。
もちろん「すごい90代」では、大城さんのことも紹介させていただいた。この10月で93歳になった。
いま施設に入っておられる奥様にも本を見せてやりたい。友人たちにも、という。

お住まいは標高350メートル余の山上にある。戦後の開墾の集落で、いまは9世帯しかいない。もともとは山の上の原野である。19歳のとき開墾に入った。ツルハシやクワ、モッコで、岩をどかし木の根っこを掘り道を作った。
舗装されているとはいう、途中は狭くて、ガードレールもなく、なかなか油断できないクネクネの道。
ひやひやしながらも、やっとたどり着く。大城さんは、畑におられた。おおーーと笑顔でゆっくり歩いてこられる姿が、じつに絵になる。

「こんな山の上にわるかったのぉー」。
お礼にと、面と和紙人形ををいただいた。
この般若の面は大城さんが彫られたものだ。
こんな見事な彫刻もされていたとは、驚いた。

手漉き和紙の見事な達人。創作和紙人形もすばらしい。村祭の芝居の脚本も書く。
戦後の闇市時代の話、集落の開墾、三匹の豚からはじめた養豚業も、やがて500匹になったという。元気にうちにお聞きしたいことはたくさんある。おもしろい大城忠治物語ができそうだ。

すごい90代には、大城さんのことをこう書いた。
年をとるほどに人は神に近づくという、まさに大城さんの笑顔は翁そのもの。古来、翁は神の化身である。なにがあっても紛動されない。すべて笑い飛ばしてしまえる人。風吹かばどうぞ風よ吹いておくれ、雨降らばどうぞ降っておくれ。大城さんは、そんなTAO(無為自然)の人だなあと思う。