過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

考えを止める(2)

考えを止める(2)こんな話を聞いた。インドで出家したアメリカ人からだけど、出典は聞かなかった。『マハーバーラタ』あたりかもしれない。

ある男が、とても優秀な召使がほしいと思っていた。なんでも率先して、やってくれる召使。そうして、そんな召使があらわれた。なに命令すれば、即座にやってくれる。「ご主人様、つぎは何でしょうか」と。はい次は、はい次は……。どんなことでも、ものすごいスピードで、実現してしまう。

男は最初はこれは便利でいいと思ったのだが、やがてほとほと疲れてしまった。気が休まるときがないのだ。それで、ある仙人に相談した。仙人は、こうアドバイスした。「その召使に一本の立てた棒を上がったり、下がったりさせればいい」と。なるほど、そうやって命令すると、召使は棒を上がったり下がったりをずっとしつづけている。これで、男はやっと心が安らかになったという。

これ、なんの話かというと、召使とは、自分の考えそのものだ。つぎからつぎへと、ものすごい速さで動き回る考え。そうして、棒を上がったり下がったりするというのは、吐く息、吸う息のこと。すなわち、呼吸に意識を向けること。呼吸につなぎとめることを指すのだと。

考えを止めるひとつの大きな鍵。それは、呼吸に意識を向けること。吐く息、吸う息に意識を向けること。つねに、呼吸に気づいていること。呼吸につなぎとめておく。それが、瞑想の極意であると。そんな話を思い出した。