この山里は過疎化が著しい。この10年で20〜30%の人口減少率だ。このまま手を打たなければ、どんどんと過疎化がすすむ▲その過程で、インフラの整備は遅れるし、災害の復旧もままならぬ、買い物も不便、学校も廃校になる。ガソリンスタンドも郵便局も、店もなくなっていく▲ますます住みにくい山里となり、やがて集落は消滅してしまう。
定住促進が必須の課題である。そこで浜松市は、今春、「中山間地域Welcome集落事業」という制度を作った▲中山間地に移住者があった場合、移住者1人あたり10万円を、その地域の自治会に支給する。しかも、使い道は制限されない。自治会が自由に使うことができるというもの▲1人あたり10万円というのは、とってもおいしい。5人家族が移住した時、50万円だ。自治会としては、お祭の予算やらあれこれと修理、あるいは老人会や子供会の慰労など、いろいろお金がかかるわけだから、ずいぶんと助かると思う。
ただし、支給を受けるためには、事前に申請する必要がある。申請した自治会には、市は移住希望者を積極的に紹介する。自治会は、移住者に地域の決まりごとを説明したり、一緒に住居を探したりしてもらう、というもの▲その申請の締め切りがこの9月だった▲行政に聞くと、春野町41自治会のうち、申し込みがあったのは「2つの自治会」だけだという。申し込み率4%だ。その低さに唖然とする。いまの春野町の定住促進に対する意識の現状だ。
この数字だけを見ると、春野町に積極的に移住してもらいたいという意欲は感じられない▲どうせ移住者なんて、こないだろうから。この地域には、空き家がないから無理だろう。申請の書類を書くのが手間だ。申請すると、いろいろと煩わしいことがあるから。よそ者に来てもらっても困る。そもそも関心がないから。などの理由があるのかもしれない。行政のPR不足もあるかもしれない▲移住を希望して家も決めた、自治会にも入る、さあ引っ越しという人に対して、「自治会の総意として移住者には来てもらいたくない」と伝えた自治会もあった。3日前のことだ。山里の定住促進の難しさが、おわかりになるかと思う。
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