過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

一日春野を案内した

11日、一日春野を案内した。NPO法人雲を耕す会の講座「春野の山里めぐり」。参加者11名。クルマ4台に分かれて移動。春野の自然を堪能することと、そこに暮らす人々との出会いがポイント。というわけで、池谷が段取りと案内をすることになった。

秋葉神社の下社、キャンプ場で待ち合わせ。銀杏の紅葉。キャンプの家族付が30名くらい。冬になっても、焚き火を楽しむキャンプ客が増えてきたという。

②三須さんのお宅を訪ねる。昨年、東京から移住された。大山林主の古民家を買って改修している。蔵が二つもある。この家だけでも一日じっくりと旅ができそうな趣がある。ダルマストーブがなつかしい。

③若身にある元旅館の山口邸。秋葉山信仰と塩の道で栄えた日本民藝館のようなしつらえ。現在は地域の寄り合いの場として、音楽教室の場としても活用している。周辺も散策。レトロな味わいの松本屋旅館。元医院の診療所。和菓子屋。

④山繭の機織りと和紙づくりの鶴田さん。山繭は、室内で桑の葉を与えるのではなく、天然のクヌギやナラの木の花との中で育てる。サナギから糸をとって機を織ると、薄緑色に輝く布ができる。さらには、和紙作りにも挑戦している。和紙に絹や芭蕉など、さまざまな素材を織り込む。この仕事が楽しくて仕方がない。そういう溌剌とした姿に感銘した。

⑤山里の負の面も見てもらう。自己破産した料理屋と建物。競売されて、いまはキリスト教系の宗教団体が落札して、教会となった。国道沿いに次々とつくられる太陽光パネル

⑥勝坂集落へ。400年つづく勝坂神楽で有名。いまも木造の勝坂小学校がある。かつては、生徒が100名余もいた。すでに廃校となり公民館として使われている。映画監督の木下恵介もこちらに疎開してた。いまこの集落は10世帯ほどだ。

⑦紅葉の見どころ明神峡までドライブ。紅葉の見頃はあと10日くらいか。第一級の景観ながら道幅が狭く、クルマのすれ違いに神経を使う。

⑧そば処一休さんで、十割そば。昼食。一休さんは、ひとりでコツコツと店も家も、ギャラリーも、離れの家も作った。4棟も手づくりというすごさ。チェロと渓流釣りを楽しんでいる。

⑨木造の名建築の植田公民館。地元の材をふんだんに使ったぜいたくな造り。天竜材にこだわる建築家・辻垣正彦さんの設計による。建設には地元の人たちが総出で普請に携わった。30年前に建てられたが、温かい落ち着いた雰囲気。木造のしっかりした作りは、温かい。やすらぐ。呼吸していてラクでくつろげる。マインドフルネス=気づきの瞑想の会場にいいなあといつも思っている。

⑩ここで散開。ぼくは郷土史家の木下恒雄さん(85歳)を訪ねて、明治につくられた王子製紙の歴史について2時間の講義をいただく。春野の気田の町は、王子製紙がつくられたことで、できた町である。その歴史を、ただいま執筆中。500ページ余の本になるという。