過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

①【名人】2025.4.5

①【名人】2025.4.5

「一度遊びにおいで。診てあげるよ」
私が腰痛で苦しんでいた時のことだった。まっすぐに立ち上がれない。いつも腰が曲がっている。腰から足の指先まで痺れて重く、冷えている。32歳くらいの時だ。  
  ▽
工藤先生という整体師の友人がいた。当時の首相だった竹下登も通っていたほどの名医だ。工藤先生は私の体を少し触って言った。

「ああ、やっぱり」
──え?何がですか?

「体中の細胞が『負けるまい』となっている。特に太ももがカチンカチンだ。だから硬直した筋肉に引っ張られて骨がズレて、腰痛になっているんだよ」

──どうしたらいいんでしょうか?
「大事なのは『急がば回れ』だよ。『負けるが勝ち』なんだ。そういう生き方をしないと、腰痛は治らないよ」  
  ▽
工藤先生の言葉が腹に落ちた。それから会社内で異動があり、私はドイツとイギリスの担当から、社内の株式の業務に異動となった。会社の持株会のマニュアル作り、株主総会の想定問答集の作成、日銀への事務的な報告などの仕事だ。  

それ以外は、だいたい忙しいことはなくなった。それまでの深夜まで働いていたような仕事はもうやめた。17時半になると、「はい、失礼します」と会社を後にする。『急がば回れ』『負けるが勝ち』という生き方を実践した。  
  ▽
すると、不思議なことに3ヶ月も経つと腰痛が消えていた。それ以来、35年間、持病だった腰痛は一度も起きていない。 
 
わたしの腰痛は「怒り」が主因であったろうと思う。仕事にがんばっているとラクしている他の部署に怒りが湧いてきて、始終怒っていたように思う。それが、心身を痛めつけていたのだ。そのことに治ってから気がついた。

《治腰銘》
触診知心病:触診して心病を知る
腰疾即心疾:腰の疾は即ち心の疾
負勝玄機処:負けて勝つ玄機の処
三十五年癒:三十五年の癒え

《整体悟道》
首相亦通名医所:首相も通う名医の所
三十二歳腰痛苦:三十二歳 腰痛し苦し
触診一言心病露:触診の一言 心病露わに
鋼腿引骨歪如杵:鋼の腿 骨を引き歪ますこと杵の如し
急回負勝転閑職:急がば回れ 負けるが勝ち 閑職に転じ
五時半退社積楽:五時半に退社 楽を積む
怒因自覚三ヵ月愈:怒りの因 自覚して三ヶ月にして愈ゆ
卅五春秋無再佝:三十五春秋 再び佝むこと無し