過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

鍛冶屋の片桐さん

鍛冶屋の片桐さんって元気かなあ。
ふとひらめいたので、電話してみた。
「あんた、だれかね」
──池谷です。春野の池谷です。
「はあ? わからんなあ」
──なんども、お訪ねしていますけど。
そう言っても、よく通じていなかった。
けれども、元気そうだった。
「先月、もう90歳になってなあ。足腰は痛くてつらいぞ。でも、ありがたいことに、あちこちから注文があって、忙しいだよ。
足が痛くなければまだがんばれるぞ。弟子がいればなぁ。鍛えこんでやるだが、いないもんだで、ぼくの代でおわりだ」。
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片桐さんは現役の鍛冶屋だ。
地金を焼き付けて鋼にする。そして研ぐ。さらには、販売までやる。
奥さんはずいぶんと前になくなって、ひとり暮らし。
佐久間町というかなりの山奥に暮らしておられる。
来月、お訪ねすることにした。
写真は4年前の春野の産業祭でお会いしたときのもの。
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むかしは、村には必ず鍛冶屋さんがいた。
「村の鍛冶屋」という文部省唱歌がある。1912年の制作。
一、
暫時(しばし)も止まずに 槌打つ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
鞴(ふいご)の風さへ 息をもつがず
仕事に精出す 村の鍛冶屋
二、
あるじは名高き いつこく老爺(おやぢ)
早起き早寝の 病(やまい)知らず
鐵より堅しと 誇れる腕に
勝りて堅きは 彼が心
三、
刀はうたねど 大鎌小鎌
馬鍬(まぐわ)に作鍬(さくぐは) 鋤(すき)よ鉈よ
平和の打ち物 休まずうちて
日毎に戰ふ 懶惰(らんだ)の敵と
四、
稼ぐにおひつく 貧乏なくて
名物鍛冶屋は 日日に繁昌
あたりに類なき 仕事のほまれ
槌うつ響に まして高し

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