過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

古墳跡の土地 100坪1万円でもやめといた

「悪いことは言わん。それはやめときな。金をもらっても無意味な物件だ」
土木の専門家のYさんの意見だった。

袋井の愛野駅から徒歩10分、見晴らしのいい斜面。
100坪。「任意売却で10万円」という情報を得た。
農地のため農家資格が必要で、斜面。

自分は農家資格があるし、売買ができる。100坪10万円、駅から徒歩10分。おもしろい。農転(農地から宅地へ)も可能。
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興味あるので現地視察してみた。
調べたら6世紀の古墳跡だった。上には寺院と墓地。しかし、寺院の境内を訪ねると、見晴らしはよく感じはなかなかいい。

「任意売却」というのは、地主が自己破産して、破産管財人が売り主。通常、いくらでもいいので処分してしまいたい物件だ。

「農地のため農家資格ない普通の人は買えない」「斜面のため耕作できない。土地改良に費用がかかる」「古墳のため出土品が出てきたら、費用がかる」などで、「100坪1万円」なら買いたいと告げた。
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6世紀の古墳なら、なにかおもしいこともありそうだと思ったからだ。
しかし、しらべてみて厄介なことがわかった。

①建設工事中に古墳や遺跡を発見した場合は、工事を中止して自治体に届出をする必要ある。

②出土したものが歴史的価値があるものかどうか、調査(試掘)が入る。発見者(開発者・土地所有者)が所轄の警察署長に提出を行い、警察署から都道府県・政令指定都市および中核市教育委員会にまわされ、教育委員会によって鑑定が行なわれる。

文化財保護法では、埋蔵文化財包蔵地で建築工事や土木工事を行う場合は、工事着手の60日前までに「埋蔵文化財発掘届」を自治体の文化財担当あてに届け出ることが規定されている。

埋蔵文化財包蔵地であることを隠して売却すると、告知義務違反に該当し、買主に損害賠償を請求されるおそれがある。埋蔵文化財包蔵地であることを知らなかった場合も、売主の確認不足とみなされる。

埋蔵文化財包蔵地を届出しない工事は、文化財保護法違反にあたり、工事の注意・禁止を命令される。届出しない工事をした場合、文化財保護法第195条・196条に違反する。第195条は重要文化財を対象としており、損壊・毀棄・隠匿すると5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科せられる。

埋蔵文化財包蔵地を届出しない工事をした場合、埋蔵文化財の保護のための措置が終了するまでの期間、工事を停止となる。また、発掘調査の費用は、埋蔵文化財を現状保存できなかった原因者の負担となる。

文化庁によると、埋蔵文化財は国民共有の財産とされている。出土品は、拾得物(落とし物)として取り扱われ、発掘地の都道府県に帰属される。

ということで、これは売れない物件だなぁ。タダでも、もらいたくない。もしも斜面でなかったら子供の遊び場にしてもいいんだけれど、うちから一時間余はかかるのでアウト。草刈りの管理も必要だし土砂崩れの責任もある。
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これまでの「日本列島改造」ブームで、道路や住宅の建設が進んだ頃、古墳が出てきたら、かなり面倒なことになり、建設の遅れは工事業者の負担になる。

もしも古墳などが出土したらそのまま廃棄、埋めてしまうことがあったろうなと類推される。それで、貴重な史跡や埋蔵品がこの世に消えていったのではないかと思われる。