「ものすごくつまらないぞ」と言っても「一緒に行く!」という。ではつまらなさを味あわせてやるぞ、と思ったが、ぐずられたらこちらが困る。それで、たくさんの童話と絵本をカバンに詰めた。それからシールとノートを持たせた。
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入国管理の事務所(出入国在留管理局:外国人の在留審査、受入支援、難民認定業務をしている)に来たのだった。
目的は、ベトナム人の僧侶を招聘して、5年間のビザを取得するための手続きだ。ベトナムのホアさんとともに来た。
足りない必要書類は、ベトナムの仏教会から派遣されることを証明するもの、その仏教会の所在地、沿革と概要。
さらには、受け入れ側のお寺(天恩寺)の概要。建物、組織、規約、信徒数、教えなどを記載したものが必要という。
これは、ぼくのほうで作ってあげなくちゃいけない。まあ、なんとかなりそうだ。
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入管でそんな手間のかかることをしていたので、あかりは暇だ。
シールをノートに貼って物語を作って遊んでいた。
おとうちゃんは、トイレに行っていて入管にもどってきた。すると、あかりのそばで、外国のおばさんが優しい目であかりを見ている。
ぼくが話しかけると、「この子は、福を運んでくる子だよ。自分でいろいろものがたりを上手にまとめている。頭がいいね。」なんて言ってくれた。
ペルー人だという。はじめは「マチュピチュに行きましたか」などとやりとりしていた。そのうち身の上話を聞く。故国の父親が危篤で大至急帰らなくちゃいけない。でもパスポートが切れていた。それで、緊急のものを発行してもらいに来たという。
「夫をがんで亡くしてもう7年。娘は21になった」という。自動車修理の会社の社長が亡くなってから事業は自己破産。もう家は差し押さえられて住めなくなったので、代わりに競売物件を買ってそこで暮らしている。仕事はカイロプラクティックだという。
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彼女が「あなたは、どんな仕事しているの?」と聞くので、「本を書いたり企画している。こんな本を昨年出したよ」というと、それを見て買ってくれた。
本には取材した人の写真が掲載されているのだが、「あ、これは春野ケアセンターの遠藤先生だ」という。
「えー、どうして知っているんですか」。
「だって近くにいたから」という。
「あ!とすると、あそこで整体マッサージしていた方ですか。いつも太った猫ちゃんがいて、いつも可愛いとあかりと眺めていたんですよ」。
なんて話になっていった。
間接的に、住むところがなくなったので、空き家を探してほしいということを、ある人から頼まれていたことがあった。そんな話もした。
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ぼくは、日本の入管にいく機会など、一生に一度も行くことはない。
しかも、子連れでいって楽しいところじゃない。
それが、あかりの縁でこうしてペルーの人とつながりを持てた。しかも、家の近くに暮らしている人だった。そこの店(元自動車修理会社)には、車の修理を頼んだこともあった。
それが、入管の窓口で出会うなんて不思議な縁である。
対話のきっかけが掴めると、外国人であってもいろいろ共通項があって、つながっていく。おもしろいものだ。
あかりには、記念にと「マチュピチュ」(ペルーのアンデス山脈の高地に古代インカ帝国の遺跡)のキーホルダーをプレゼントしてくれた。あかりは、お守りにすると言っていた。
ぼくの場合、どんなところでも、気楽に初対面の人と話をすることにしている。さらにあかりを連れているので、足手まといになる率も高いが、かえってあかりを通して、和やかなつながりとなる。そんな一日であった。
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なにしろまちなかに来るのは、クルマで3時間かかるからね。あちこち用事したり、ふと寄ってみたい人のところに行く。
帰りには市役所に行って情報を仕入れ、自民党と公明党と共産党の議員控室にも寄ってきた。国際交流協会でベトナム人の相談システムについて。そして、不動産屋に寄って民泊の可能性について打ち合わせしたのだった。
途中、ブックオフで『鬼滅の刃』を3巻買った。あかりはそれを集中して読んでいたので、じっくり話ができたのだった。そんなこんなで、なかなか楽しい一日であった。かなり怖いこともあったが、それは別の投稿に。