過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

いきなり鳥肌、背中がゾクッとした

あかりが、「天竜川の渦巻いているところを見たい」というので、帰りに寄ってみたのだった。
ところが、もう薄暗いのでよく見えない。もっといい場所を探してみよう。
「あ、ちょうど階段がある。ここを上ればよく見えるかも」その階段を3段くらい上がった。
「うっ、なんだかぞっとするぞ」。全身に鳥肌がたった。あかりも、同時に背中がゾッとした。
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なんと、階段の先には、鳥居と神社があった!ぅ----—これは、怖いなぁ。
柏手(かしわで)を打って階段を下りた。しかし、まだ鳥肌が立っている。
おもわず、「南無妙法蓮華経」とおとうちゃんとあかりは唱えたのだった。駐車した車に戻っても、まだぞっとしている。
「なんだか霊的な怖いものがいたね」
不動真言(ノーマク・サーマンダ・バーザラダン・センダ・マーカロシャーダヤ・ソワタヤ・ウンタラタカマン)や虚空蔵菩薩真言(ノウボー・アキャー・キャラバヤ・オン・アリ・キャーマリ・ボリ・ソワカ)を唱えた。
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しかしあかりは言う。「南無妙法蓮華経がいいんじゃないの? いちばん力強いから」。
そういうので、親子でクルマを運転しながら「南無妙法蓮華経」と唱え続けた。「南無阿弥陀仏はどうなの?」と、おとうちゃん。
やってみたら、あかりは「やっぱり南無妙法蓮華経がいい」と言う。
それでもまだ、背中がゾクゾクする。二人でお題目を唱え続けたのであった。あかりは、蓮華座を組んで合掌して、お題目を唱え続けている。
そうすると、なんだか安定した力強さ、守られている安心感が湧いてくるのであった。
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じつは、その天竜川の渦巻くところは、水難事故があった場所であった。
12年前の8月、「遠州天竜舟下り」で船が岩場に衝突して転覆し、乗客4人と船頭1人が死亡したところ。
「いろんな怖い漫画や物語を読んでも、こんなふうに背中がゾッしたり鳥肌が立つってことはないよね」とあかりは言う。
「そうだね、まだ怖い感じがするものね。でも、貴重な体験をしてよかったね」
帰り道、空を見あげたら、山に隠れていた満月がぼんやりと上がっていた。