過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

かくして、異次元の男がやって来ることになった①

「いま、おもしろいやつがいるんだ。草刈りしてたら、ニコニコした顔でやってきて、〝草刈り手伝うので飯食わせてくれませんか〟と言うんだ。それで、草刈りやらせて鹿肉を食わせたよ。

それで、おれはこれから罠猟の講習に行かなくちゃいけないんで、時間がない。そいつは池谷さんの所がいいと思うんだ」

くんまの農家民宿のMさんから電話だった。
  ▽
──ん?
「まあ、本人に替わるよ」

──はい。池谷です。
「あのお、そちらに行きたいんですけど」

──はあ? いまどこにいるの?
「えーと、西鹿島のほうです」

──まあ、来ればいい。けれども、こちらから迎えには行けないよ。車で40分くらいかかるからね。いま忙しいし。
「でも、行きます」

──じゃあ、バスは2時間に一本くらいはあるから、春野の停留所に来たら迎えに行くよ。
「無理です。いま所持金は65円しかないんですよ」

──あちゃあ。それじゃあ、ヒッチハイクでもして来るんだね。
「いや、オレって体がデカいし、小汚いからみんな怖がって無理だと思います。

──じゃあ、がんばって歩いてくるんだね。この炎天下で行き倒れになるかもしれないけれど。
「歩きます。行きます」
  ▽
そういって電話を切った。けれども、歩けば8時間余はかるぞ。いまものすごい暑さだから、ぶっ倒れるに違いない。

行政やお寺や交番に寄っても、なんともならんだろうしなあ。
まあ、こうして電話でやり取りしたってのは、縁があるわけで、無下にもできない。
  ▽
ということで、近くのTさんに電話。

──これこれこういうわけで、よくわからない男なんだけど、一泊させてほしいんです。翌朝、早く起きたら春野のうちまで歩いてこさせればいいと思います。ひとつよろしく。

そんなわけで、心優しきTさんがクルマで迎えに行ってくれた。そこで夕食と一泊となる。着いたら早速、滝壺で行水して、草刈りを始めたという。

かくして、異次元の男がやって来ることになった。(続く)