過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

横須賀街道ちっちゃな文化展

「頭の中でほとんど出来あがっているんですよ。あとは、それを体を使って物質に表現するだけ」
木の歯車をいくつも組み合わせて、自然な動きを見せる動物たち、不思議な物体。
ほとんどが木でできていて、超アナログの世界だ。
デジタルの世界、コンピュータグラフィックばかりの世界が進むと、こうした手触り感のある、身体に力感のともなうものにであうのは嬉しい。イメージがいっぱい湧いてくる。
できあがったものもすごいが、それをつくるプロセスにまたおどろいた。
着想して頭の中で作りあげ、ノートに精密に描いていくという。
そのノートを見せてもらった。精細で力学的にも計算されていて、そして美しい。1枚目の画像、イルカの動きの精密な図面が黒板に展示されているが、こういうものが頭の中で、すでに完成されているというわけだ。
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きのうは、掛川市の横須賀街道を歩いた。「ちっちゃな文化展」という22回も重ねている催しがあった。古い町並みと古民家でアーティストたちが展示している。
京版画家、古い戦闘機の模型づくり、陶芸家など、いろいろな人とのやりとりが楽しかった。
そして、醤油屋、船問屋、材木屋、魚屋、テイラー、ふ菓子屋、大判焼き、たくさんの店が健在。1300年も続いている三熊野(みくまの)神社の境内の波動のよさ。こんなにすごい町が遠州にあったのだ。
戦前、そして江戸時代の日本って、こうした工夫を重ねた職人たち、対面販売の店、そんな出会いの場ばかりだったんだろうな。
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ところで、さきほどの、歯車のオブジェを作る方の人生に興味があった。こうしたものをつくりあげる人の世界ってどんなんだろう。なにかきっかけだったろう、と。
仕事がら、そのひとの人生行路を聞き出していくということが習いになっている。
もともとは、博物館の展示の企画をしていたという。どのように見せるのか、どのように表現するのか。たとえば、恐竜の骨づくりとか。あるいは、宮沢賢治展をやる時、岩手の石巻に出かけて賢治のすコセした場所を訪ね歩いて微細にスケッチしていく。緻密にディーテイルを調べて展示する。
そんな仕事をしていて、こうした歯車の組み合わせの玩具をつくりあげていった。
おお、そんなおもしろい、やりがいのある仕事があったのか。人生、それぞれだなあ。