過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

空き家案内と買い物代行など

利用者さんと歌をじゃんじゃんと歌っている時に、突然、訪ねてきた人がいた。
「春野に移住したい」と言う。
Iさんは、蕎麦屋一休さんの紹介という。
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定職はある。春野から〈まちなか〉まで通うことになるという。そして、大型バイク(ハーレーの1300CC)が趣味なので、近所迷惑にならない田舎に暮らしたいという。
Iさんを施設内で待たせて、利用者さんたちと歌を歌っていた。時間が来たので、「いまから、利用者さんを家まで送るんだけど、同行しますか。帰りに、空き家を案内してもいいですよ」ということにした。
利用者さんの家まで送る道筋で、「ここも空き家」「あそこも空き家」と20軒ばかり、示した。
そして、帰りに、Iさんが買おうと思っている中古物件を見に行った。こういう不動産を見るのがぼくは大好きなので、つい、あちこちと見て回る。
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「この家が200万円」。
─だめ。この程度の家は、買うものじゃなくて、もらうもの。売り主は、売れずに困っているはず。家を解体するにも100万円以上はするし。
「この家は750万円」。
─う〜ん。たしかにいいね。日当たり、見晴らし、便利さ、きれいさ、申し分なし。しかし、隣の太陽光パネルがいやだなあ。500万円くらいに安くできるかもしれないよね。
「この家は、500万円」。
─別荘地だから、田舎の閉鎖性はないので、気楽に暮らせる。でもここは、日当たり悪いね。北を向いている。健康に良くない。湿気が多いのもよくない。気田川のすぐそばで、氾濫したら危ないよね。やめたほうがいいよ。
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などと、話しているうちに、「ちゃんと住んでくれるなら、土地と家をタダであげてもいい」という人がいたことを思い出した。
そこは別荘地でかなり遠い。道も悪い。しかしタダというのは、すばらしい。Iさんは、「あした見に行きたい」と言う。
そして、気田の町を案内。空き家の元旅館を案内したら、彼はそこを気に入って、「ぜひ、ここに、お願いします」という。
しかし、ぼくは不動産屋でもないし、そこの地主なども知らない。いま動く時間もない。
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「まあ、タイミングがあえば、地元に聞いてみるね。しかし、ぼくはいまデイサービスの仕事で、ほとんど忙しいので、期待しないように。
空き家の案内とか紹介はビジネスじゃあないので、忙しいときは、すぐに忘れてしまいます。ほんとに暮らしたいなら、なんどか足を運んできて、タイミングが合えば今日みたいに案内しますよ」
自由な時間と余裕があれば動けるけれど、いまはデイサービスの経営に一所懸命の時代だ。
しかし、「やってきた縁」は大切にしたい。なにかのとき、うちのデイサービスの送迎のバイトも頼めるかもしれないし。
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そんなことも話していると、かれは「買い物代行のようなこともしたい。仕事はまちなかに毎日通うことになるので、この地元のお年寄りの、買い物代行もやってみたい」と言う。
山里は店がほとんどない。お年寄りはクルマに乗れない。バスもほとんどこない。買い物難民は多いので、その人達のために役に立つことをしていけば、おもしろい展開があるかも。
ぼくも、買い物代行をしてもいい、とかねてから考えていた。ネットを使えない、クルマにも乗れない、そういうお年寄りたちが多い。
そこで、ほしいものをAmazonに発注すれば、このデイの施設に配達される。注文した人は、施設まで取りに来てもらえばいい。多少の経費、事務手数料などは、いただく。
ま、そういう利用者が増えたら、デイの仕事の集中力が削がれてしまう。かといって、人を雇うほどの利益が出るわけもない。これはあくまで、施設の魅力の一つとしてのサービスという位置づけだが。