「こんなに気楽にたのしく歌えるところって、ここしかないわー」
「ほんとにそうだわ」
と、利用者さんたちに喜んでもらえた。
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その方たちは、ほかのデイサービスも利用しているが、そこは気ままに歌えるような雰囲気ではないという。利用者さんが多い施設だと、どうしても「はい、みなさん、こうしましょう」という形になりやすい。
こちらは多くても7名くらいだから、かなり自由気ままだ。
プログラムは用意しているものの、その人、その場、流れに応じて臨機応変でいく。なにしろ、こんなぼくが経営者だから。
個人的に寄り沿って、一緒にそれぞれ工夫していく。
塗り絵の好きな人は、そればかりに集中している。いわば写経みたいな精進行(しょうじんぎょう)にもみえるほど。
あるいは、絵手紙を書いたり、干し大根を作ったり、散歩に出かけたり。かなり自由だ。
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きょうは、歩くのもほとんど難しいという利用者さんがいた。しかし、「歌うことは大好き」という。それで、カリンバという指ピアノで伴奏しながら、じゃんじゃんと歌った。戦前のもの、戦後のもの。大正期のもの。
唱歌と童謡。たまに演歌。
白秋の作詞には、たとえば、こんな歌がある。
ゆりかごのうた
この道は いつか来た道
あめあめふれふれ かあさんが じゅのめで
雨がふります 雨がふる 遊びにゆきたし 傘はなし
赤い鳥 小鳥 なぜなぜ赤い 赤い実を食べた
チョッキン チョッキン チョッキンナ
ちゃっきり節
からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ
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歌っていくと、その情景が浮かんでくる。幼き頃の思い出がよみがえる。亡き父や母の面影が浮かんでくる。みなさん、そう言われる。
ぼくのほうは、歌うことで、元気が出る。エネルギーが湧いてくる。ありがたい仕事と思う。
そんな一日であった。