過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

おもしろうてやがて哀しきコブラかな


四月の半ば、西インドの砂漠地方、プシュカールという町を旅していた。気温は五十度近くにもなって、日中はほとんど歩けない。車に乗っていて窓を開けると、巨大なドライヤーで熱風を吹きつけられるかのようだ。

そんな町の昼下がり。筵に座ったコブラ使いが、笛を拭いてコブラの踊りを見せていた。へえーっと感心していると、どうも、コブラは笛の音色で踊っているのではない。

コブラ使いは、袋の中にコブラをしまい込んでいる。客が通ると、袋のコブラの頭をひっぱたく。コブラは怒って鎌首を持ち上げ頭を膨らませて、威嚇のポーズをとる。

なーんだ。コブラは笛の音で踊るんじゃなくて、頭をはたかれてムカッときているだけなのだ。

客が寄りつかないと、またコブラは袋の中に入れられる。また客が通る。コブラは頭をひっぱたかれる。そんなことが繰り返されていた。よく見ていると、十分おきにひっぱたかれている。コブラ君は、袋の中で熱いだろうし、外に出れば頭を叩かれる。

ぼくは「おもしろうてやがてかなしき鵜飼いかな」とよんだ芭蕉の心境だった。