過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

インドのハンセン病

インドではハンセン病患者が四百万人いるとされている。ハンセン病は遺伝する不治の病だとか、悪徳の報いとみるような迷信も残っている。

インドを旅していると、ハンセン病にかかった乞食をよく目の当たりにする。彼らが生活するためには、乞食をするしかないのだろう。

「お金をちょうだい」と、六つ位の女の子が、微笑んで寄ってくる。しかし、その差し出した手には指がない。「ああ、こんなに幼い娘がなあ……」と、胸にぐっときたことがあった。

列車の長旅をしていたとき、列車が駅に着く。物売りの声がかまびすしい。窓を開けてぼんやりとしていると、突然、目の前に手がニューッと突き出された。「バクシーシ(お布施を)、バクシーシ」と乞食が叫ぶ。包帯で巻かれたその手には、指がなかった。

気温が四十度を越す炎天下に、通りで座りっぱなしの女乞食がいた。ハンセン病のために、目も鼻も崩れ指もなかった。

目の前を通る人の気配を感じては、小銭の入った空き缶をガシャガシャならして、「ババー(旦那さま)、ババー」と、叫ぶ。声帯はつぶれているのだろう、洞窟の中で石をこすりつけたような音だ。

だが誰ひとり、見向く人もいない。お布施をする人もいない。通り過ぎるだけだった。