過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

海辺でみた人とブタとの循環

日が昇る前に起きて浜辺に出る。ざざざーっと波が打ち寄せる。暗いが波の白さはよく見える。潮風に吹かれて、夜明け前のなんとも瞑想的な時を味わっていた。

昨日、喧噪のカルカッタを逃れて、列車で10時間ほどかけてプーリーにやって来た。ここは漁師町で、ヒンドゥー教の聖地でもある。貧乏バックパッカーの私は、海沿いにある一泊五百円のゲストハウスに泊まった。

浜辺を歩いていると、とおく海辺に人影が見える。じっとして動かない。なんだろう、夜明け前の瞑想でもしているのかな……。

近づいてみると、老人が海に向かってしゃがんでいる。歳のころは七十くらいか。痩せて筋張っているが、鋼のような体だ。

老人の隣にはブタがじっとしている。イノシシのように黒くて大きい。

ブタは、なにやら待ちかまえている様子。

やがて、老人が大きなのをブリッとひねり出す。ブタは、「待ってました!」とばかりにくらいつく。ものの数秒でばくばくばくと食べ尽くす。そして次を待つ。これって、ブタにはできたてほやほやの御馳走なんだな。

悠久な大海を眺めていたすのは、なにより気持ちよさそう。終わったら、波がおしりをきれいにしてくれる。ウンチは波がさらっていく。ときに、こうしてブタがよろこんで食べ尽くしてくれる。

そのブタを人間が……。こうして、うまいこと循環しているんだ。

ざざざーっと私の足下を波がさらう。やがて水平線から朝日が昇ってきた。