過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

してYouTubeで発信して、話題になる。それが本になって売れる 雨穴

江戸川乱歩のように、いきなり探偵が出てきたり殺人が起こるわけではない。「スケッチ・ミステリー」という新たな手法。これまでにない不気味な読書体験を醸し出す。

『変な絵』という小説をなにげに手に取ってみた。描かれているのは、普通の絵。だが、この絵を描いた女の子がやがてお母さんを殺してしまう。それを予感させる絵が解説される。口元の歪み、ドアのない家、尖った樹木。しかし、木の中にいる小鳥が庇護を求めている。そこに可能性がある------。そんな話だ。

そのほか、ブログに投稿された絵や、消えた男児が描いた絵、山奥で見つかった遺体が残した絵など、まったく普通の絵ばかり。あるいは普通の間取り図なのだが、よく見ると、何かがおかしい。
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行政に廃校活用のプレゼンに行った帰り、あかりとサイゼリヤに行く。サイゼリヤは安いし美味しいし、大好き。かつて社長の家に取材に行った縁もある。

サイゼリヤは、サンストリートという雑居ビルの二階にある。一階は谷島屋書店。私が月に一度くらい出かける書店はここだけ。最近、流行りの書物をざっと立ち読みする。

平積みされていたのが、雨穴(うけつ)という著者の本。『変な絵』『変な家』を手に取る。思わず引き込まれてしまった。
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あかりも気になるようで、ここのところ毎日、おとうちゃんと雨穴の動画を見ている。あかりは、怖いものが好きで読書しているのだが、こうしたミステリーに関心をもつようになってきたわけだ。

YouTube見ていたら、なんと、総動画再生回数は8,000万回を突破。チャンネル登録者数は95万人を超える。2021年に覆面作家としてデビュー、まだ2年だ。
推理系ユーチューバー、ウェブライター、ホラー作家。すでに「ネット界の江戸川乱歩」「出版界のバンクシー」とも呼ばれるようだ。

デビュー作は“不動産ミステリー”『変な家』(2021年7月刊行)は、ウェブメディア記事、YouTube動画、その動画と連動した小説で、来年の3月に映画化の予定。続編となる『変な家2』も12月に発売された。一見どこにでもある普通の民家の間取りの謎を描いたミステリー作品。

初長編小説『変な絵』(双葉社刊)は53万部を突破(2023年12月22日時点)、2023年の「年間ベストセラー総合ランキング」では、日版は総合3位、トーハンでは総合4位。
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いま本は売れない。書店も閉店が多い。ぼくのような出版企画と編集者は、仕事が行き詰まるわけだ。そもそもみんな本を読まない。必要な情報は瞬時にネットで手に入る。それでも、お金を出して買いたいという本でないと売れないわけだ。

そこへいくと、こうしてYouTubeで発信して、話題になる。それが本になって売れる。そして、YouTubeの登録が増える。また本が売れる。続編が出る。映画化される。海外から翻訳のオファーがたくさん来る。そういう時代になってきているんだなあ。