過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「うしろに、うしろに来ないでください!」 裁判長に叱られた。

「うしろに、うしろに来ないでください!」
裁判長に叱られた。
二審(静岡地裁)の第一回公判のときだ。
  ▽
出版社が編集制作費を支払わないので起こした裁判だった。一審の簡易裁判所では、勝訴。被告のN出版は控訴した。被告(相手方のN出版)は、証拠を捏造した。そのことを立証したら、一審(簡易裁判所)で認められた。
判決では、「原本には改竄の形跡が窺える」「重要な部分に関する内容に変遷がみられる」「被告本人の陳述は信用性が乏しく採用できない」(第1審判決)とされ、被告は全面敗訴。
そして、二審の裁判が始まる。
まず、裁判長が私に質問した。
「一審判決では、被告(N出版)が証拠を捏造したことがみとめられています。ええーとその証拠書類はどの部分ですか?」
私は原告席を立って、裁判長のほうに走り寄った。捏造された証拠書類を持っている。
すると被告の弁護士は、慌てて裁判長席に走り寄る。
二人は裁判長の後ろから、「ここの箇所です」と示そうとする。被告の弁護士は「いやこれは------」とやりとりがはじまる。ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ。
裁判長は、自分の後ろで原告と被告がやりあっているのが腹立たしかったのだろう。
「うしろに、うしろに来ないでください!」と私たちを制したのであった。
  ▽
裁判は、客観的な証拠があるかないかがポイントである。
正しいとか正しくないとかいう論議だけでは勝てない。きちんとそのことを証明する客観的な証拠を示せるかどうかである。
だいたい人は、「このままでは負ける、負けそうだ」という時、どういうことをするか。
①論点を拡散する。あれもこれもと、戦線を拡大する。目くらまし作戦。
②証拠を捏造、改ざんする。
相手は、①と②をやってきた。
  ▽
論点が拡散されると、裁判官は混乱させられる。被告はそれが目的だ。裁判官は、たくさんの案件(何十件)を抱えているので、そんなにじっくりと準備書面は読んでいない。
こちらは、相手の拡散戦略には乗らない。争点を絞り込んでいく。
そのうち、被告は、ついに証拠の改ざんをはじめたのであった。
こちらに、改ざん前の書類があった。その一点を追及していく。
  ▽
証拠を捏造したり、改ざんしたりすれば、裁判官の心証は一挙に被告の不利になる。それで一審では被告は敗訴。そして、控訴した二審でも、その証拠改ざんを裁判長に問われて、被告は慌てたわけだ。
それで、もうこちらの勝利は確定したというわけだ。
被告は、高裁に上告したものの、それは弁護士が依頼主のためのポーズであったろう。すぐに引っ込めた。「勝ち目なし」として諦めたのであった。
もう10年以上も前のことである。裁判は当事者として実践でやってこそ醍醐味がわかる。親友のヤッホさんのサポートがあればこそであった。