たぶん一年くらい前に訪ねてきた夫婦。すこし見覚えがある。
いろいろな人が移住相談に来られるので、顔とか忘れてしまっている。仕事じゃないしね。
話しているうちに、「ああそういえば」と思い出す。
「こんど、○○のおためし住宅に住むことになりました」
──ああ、あそこは「おためし住宅」ありますよね。まずはそこに暮らして、地域をよく見て探すのがいいと思いますね。しかし、いくらくらい家賃かかりますか?
「家賃と言うより、相談料みいな名目で月に2万円です」
──なるほど。春野は1万5千円だったかな。それにしても、月に2千円くらいの家を借りられるといいですね。あるいはタダとか。
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「はい。それで、田んぼは買えそうなんです。棚田で田んぼをやろうかと」
──いいですね。棚田はステキです。トラクターが入らないので、休耕田をよみがえらせるのは大変だと思いますけど。あとは、水利の問題があって、地元の人とうまくやらないと難しい」
「そうなんです。ススキがしっかりと根を張って、それを掘るのが大変。ユンボが必要なくらい。水利については、いまのところ大丈夫です」
──いわば、土木工事みたいなものですから、仲間がいないとたいへんですよ。無農薬で田植えしたら、草取りは毎日だし。
「そのあたりはまた、教えてくださいね」
──はい。もちろんです。これでも無農薬で4年間、3,000平米の田んぼをやりましたからね。20年間の耕作放棄地でした。アイガモ農法もやりましたよ。
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──それにしても、農地の取得は、農家資格がないと難しいんじゃないですか?
「それが、法律(農地法)が変わったようで、農家資格がなくても取得できるようになったんです」
──そうなんですか。ぼくが農地を取得した頃は、農家資格がないと農地は買えない。農家資格の取得に一年間かかりました。農業委員会に事業計画を出して、面談。農業委員が現地調査に2回も来ました。それから、県知事への許可申請(農地法3条の許可申請)、そしてやっと名義変更とか。現況主義だから農地に木などが生えていたら地目変更しろとか。なにしろ16筆もあったし、地主が二人いたりで、ものすごくたいへんでした。しかも、仮登記申請して、それから本登記したので手間と費用がかかりました。
そのうち、農地付きの古民家を買うときには、即、農家資格が取れるように変更になったり、一年かかっていた農家資格が半年になったり、すこしずつ緩和されたんですね」
「はい。農業委員会に行きまして、そこはすんなりと農地の取得は可能ということになりました」
──そもそもが、マッカーサーの占領政策で、日本の地主制度を解体し、農村の民主化めざしたのが「農地法」でしたからね。
でも、農地が簡単に売買できるようになると、農地をが産廃置き場になったりして、ますます農業ができなくなりそうですね。
「はい、それにNPO法人をつくって、いろいろ地域のために活動してみようと思っていますので、そのあたりも教えてください」
──決算報告とか、総会議事録とか、いろいろやっかいですけど、NPO法人はつくっておいたら、なにかと行動しやすいかもしれません。
そして、地元のキーマンはこういう人、あの地域はこういう感じだからもこのあたりにこう気をつけて------という話をしたのであった。
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農地の取得について、調べてみた。農地法が改正された。令和5年4月1日以降は、農業をする人なら誰でも農地を購入できるようになった。ただし、農地の全部で農業を行うこと、常時農業をすること(週末農家は不可。年間60日間)、地域との調和を守ることなどが条件。
「農地法3条の規定による許可申請書」と「営農計画書」を農業委員会に提出。農業委員会総会で許可。許可が下りれば1週間ほどで許可証が発行。