友人の密教僧とのやりとり。お互い宗教の話が好きだから、気楽な雑談が続く。「」は密教僧。──は池谷。
「元気にしてる?」
──まあまあ。事務処理ばかりの山。
「それが現実だね」
──うん。それが現実。子育てに仕事に幾重にも障害が立ちはだかる。
「やはりみんなそこから逃れたいから大川隆法みたいなやつの言うこと信じちゃうのかな?」
──宗教ってあの程度でいいんだろうね。まだ麻原のほうが格段におもしろいのに。
ところで、来月からテーラワーダの本作りに入る。テーマは道元。それで、東京に出かけようと思う。
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「日本にテーラワーダが紹介されたおかげで、大乗仏教がどうして必要なのかっていうことがわかってきた」
──どういうこと?
「この日本でブッダの生き方など、そのままできるはずがない。托鉢して食っていけない。戒律を保って生きていけない。インドや東南アジアだからこそ可能なこと。
そして、ミャンマーにいたら、国家に逆らって逆らったら弾圧される。鎮護国家の教えなどを押し出したら排撃される」
──なるほど。たしかにね。
「仏教といっても、普遍的なものじゃなくて、やっぱり地域性で根付く。釈迦の仏教もインドではほろんでしまったというのもある」
──やはり大切なのは生活。暮らし。その意味では、生活仏教。仏法即生活。そして、密教で言えば「方便究竟」。
「結局、生きていく上での苦難を乗り越える、苦難耐えて、それでよかったといえる人生のためにある」
──これからますます暮らしがたいへんになるし。暮らしの中で磨いていくしかない。
「それはスリランカやタイやミャンマーも同じで、結局、苦しい生活に耐える教えなんだと思う。そしてそれは地域によって受け入れられ方が違う」
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──まあその意味では、創価学会は根強い。自分で拝むことを教えている。そして仲間がいる。いちおう教学もある。中身はつまらなくて頭が悪くなるような気もするけど。
「現実の苦しみに耐え抜いて生きていける教えをみんな求めてるんだと思う。まさに創価学会はその典型。創価学会が流行った時はそういう時代背景だった」
──創価の指針がある。難を乗り越える信心、一家和楽の信心、各人が幸福をつかむ信心。だったかな。それはそれで、すばらしい。
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「でも、盲目的に教祖とか指導者に従う時代は終わってるのではないかと思う。やはりインターネットの普及が大きいかな。大川隆法の死をみて感じるのは、もうチャネリングとかイタコの時代は終わり。なにか偉大な存在に自分を預けないこと。自分自身を頼りにすることが大切」
──大作氏死亡も、そろそろあらわなるかも。じつは10年前に死んでいましたとか。遺族の了解を得て、このたび発表しますとか。
最近の事例で言うと、公明党の元党首、浜四津敏子は2年前に死んでいたのに、伏せられていた。マスコミも一切報道せず。最近やっと、報道された。そういうことが事実あった。
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「大作氏が亡くなったら、荼毘に付して仏舎利の代わりに拝むんじゃないのかなあ。阿含宗なんかはそうしてる」
──2年前、創価は大阪の太閤園を390億でぽんと買った。あそこが、池田霊園になると思う。みんなが拝みに行く。しかし、莫大な資産だから、遺産相続がたいへん。大川もそうだけど。平和財団とか作っておけばよかったのに。
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「結局は宗教といっても力の誇示だね。
──修羅闘諍の世界。どうだ。みたか。こっちがすごいぞ。お金、出世、名誉、数がたくさん、権力、権威、勝つこと、そういうのがみんなだいすきみたい。とくに、創価は。あ、ぼくもそれが好きだけど。
「それは世界中の宗教がみんなやっていること」
──日蓮の「観心本尊抄」にこうある。摩訶止観を引用して「若し其の心念念に常に彼に勝らんことを欲し耐えざれば人を下し他を軽しめ己を珍ぶこと鵄の高く飛びて下視が如し而も外には仁義礼智信を掲げて下品の善心を起し阿修羅の道を行ずるなり」
この「外には仁義礼智信を掲げて下品の善心を起し、阿修羅の道を行ずる」というのが、まさに宗教団体のありようと。
「まさにのちの日蓮の教えを慕ってる人たちがやってることだね」
──名誉勲章とか名誉博士号とか、大作氏は500くらいもらっている。学会員は、すごいというけれど、ぼくはちっとも思わない。誇示することで、かえって法を下げている。裏事情を調べるほどに、それってまさに下品の善心と思うなあ。
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「まあ、もちろんある意味で、創価は多くの人に夢を与えてる。夢だけじゃなくて生活の糧も」
──多くの人を救ってきたのも確かなこと。
「時代が必要としていた。ただもうそういう時代は終焉を迎えたと思う」
──創価の布教拡大は、戸田城聖、池田大作という傑出したリーダーの力が大きい。そして、敗戦、占領軍の政策、高度経済成長。そうした背景もあった。
これから、たいへんな時代を迎えるね。食糧危機、エネルギー危機、物価高騰。こちらは、自給自足体制に向かっている。
(続く)