過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「固定観念」が壊れる

この寒空に、日向に出てきていた深い赤茶色に輝く虫。寒さのために、スローモーションで動いてる。太陽のあたる角度によって、ときにワインカラー、ときに飴色、ときに鼈甲色。おお、なかなか美しい。……と、よくみると、それはゴキブリだったよ。

まだ寒い春先に、まちがえて石垣からでてきたヘビを見たことがある。ほとんど動かないでじっとしている。間近に観察する。冷たい光を放って、無機質の鎧に包まれた藝術作品のようだった。

突然、台所の床からゴキブリが出てくれば気味が悪い。草むらからヘビがぞろりと出てくれば恐ろしい。しかし、ゆったりと太陽の下に出てくると、まったく別の生き物みたい。なかなか親しみがわくのだった。

恐ろしいとか不気味だと思っていたものも、出くわす条件によっては、美しくて親しみやすいものになる。こうして、抱いていた「固定観念」が壊れるという体験は、なかなかおもしろい。そして、あるがままにみるというのは、とっても難しいことだなぁと思う。