過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

馬頭観音ってなんだろうか

仏教に出てくる神とか明王(みょうおう)の類(たぐい)は、ヒンドゥー教が源である。たとえば、大黒さん、弁天さん、金毘羅さん、毘沙門天などの四天王、梵天帝釈天、韋駄天、摩利支天、不動明王愛染明王‥‥数えあげればキリがない。

これらは、もとはヒンドゥーの神々である。ブラーフマンが梵天。インドラ心が帝釈天など。それらが仏教に取り入れられ、仏の教えを守護する働きとして表される。
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先日、馬頭観音(ばとうかんのん)を本尊とするお寺(長楽寺)の尼僧(吉田真誉さん)と話をした。

馬頭観音が本尊という寺は珍しい。密教の寺だから、もともとは大日如来とか不動明王が本尊だったかもしれない。

ところで、馬頭観音ってなんだろうか。
馬頭観音ヒンドゥー由来ではなかろうか。そんな話をした。
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調べてみたら、〝ハヤグリーヴァ〟という神であった。〝ハヤグリーヴァ〟は、「馬の首(を持つ者)」の意味。

聖仙カシュヤパとダヌの間に生まれたダーナヴァ(アスラ族の一つ)。
カルパ(劫 極めて長い宇宙論的な時間)の終わりがやってくる時、世界が海に覆わるが、宇宙を想像したブラーフマンは眠っていた。眠るブラーフマンの口から出たヴェーダ智慧)を、ハヤグリーヴァが盗む。

そのことに気づいたヴィシュヌ神は巨大な魚の姿になって大洪水を救おうとする。そして、ブラーフマンが眠りから目覚めると、ヴィシュヌはハヤグリーヴァを殺してヴェーダを取り返した。
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ハヤグリーヴァがヴェーダ智慧)を取り戻したという説もある。

ダイティヤ(アスラの一種)のカイタバとマドゥがヴェーダを盗んで海に隠した。ヴェーダを取り返すためにヴィシュヌはハヤグリーヴァの姿に化身して二体の悪魔をそれぞれ六つに引き裂いて殺し、ヴェーダを取り返した。

ハヤグリーヴァは苦行に打ち込んだ結果、馬の首を持つ者(ハヤグリーヴァ)以外の誰にも殺されないという身体を獲得するが、ヴィシュヌは馬の首を頭の代わりにつけてハヤグリーヴァを殺したととも言われる。

これらは、『マハーバーラタ』に書かれているという。
私は『マハーバーラタ』を、全部読んだことはないが、インド最大の叙事詩といわれるもので、いわばインド哲学の大百科事典。有名な「バガヴァットギータ」も『マハーバーラタ』のなかにある。これは、インド哲学のエッセンス。
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ともあれヒンドゥー教のヴィシュヌ派では、ハヤグリーヴァを知能・知識、探求を司る存在として重要な神格とみなしている。
そして、仏教においては、馬頭観音となっている。奈良時代以降、牛馬を守護する神として信仰されてきた。