過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

永遠不滅の実体(仏性、法身、阿頼耶識)を立てる。パーリ仏典と矛盾する。どうしてか。

ブッダの教えは、徹底して「苦・無常・無我」である。そして、四諦・八正道。因縁生起であり、不滅の実体は認めない。パーリ語の経典を読めば、それぞれテキスト的には矛盾と逸脱はないことがわかる。

しかし、大乗仏教になると、「常楽我浄」と大転換していく。
永遠不滅の実体(仏性、法身阿頼耶識)を立てる。明らかに、パーリ仏典と矛盾する。逸脱する。
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どうしてそうなったのか。

ひとつには、ヴェーダの教えをもととするヒンドゥー教に呑み込まれたり、互いに影響を与えあって形成されていったとみる。

ヴェーダの教えは、不滅の実体であるところのブラーフマン(いわば宇宙)とアートマン(真我)か一体、一如であると説く。〝アハン ブランマ スミ〟(汝がブラーフマンである)と。
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そして、もうひとつは、バクトリア パルティアなどイラン系の国と接していたがゆえに、ゾロアスター教などの影響で、不滅の実体を認めるようになったのかもしれない。

そこから、阿弥陀如来とか大日如来とか久遠仏とか、不滅の真理身があらわれていく。
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これを立証しようとすると、世界史の変遷がややこしい。

中央アジア、現在のアフガニスタン北部のアムダリア川上流域をバクトリア地方という。バクトリアは、紀元前3世紀半ばにギリシア人総督が独立して建てた王国。ヘレニズム諸国の一つとしてのバクトリア王国のもとでギリシ。ア文明とイラン文明の融合が進み、インドからの仏教も受け入れた。

パルティアは、紀元前3世紀の中頃から紀元後3世紀初めまでの約500年にわたり、イラン高原を支配したイラン系民族の国家。中国では大月氏国と呼んだ。月氏の教え=仏教となる。日蓮月氏(インドの仏教という意味合い)という言葉をよく使っている。
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このあたりから、ガンダーラが出てくる。
ガンダーラは、紀元1世紀から3世紀ごろ、地中海のローマ世界とインド、中国を結ぶ東西交易の要。東西の文明が出会う文化交流の場。

仏教文化アレクサンドロスの東進に伴い移植されたギリシア文化が融合した地域。クシャーナ朝の2世紀から3世紀を中心に、西方のギリシャ文化などの影響を受けた仏教美術ガンダーラ美術)が栄えた。
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ガンダーラには、ヒンズー教、仏教、ジャイナ教ゾロアスター教や、ペルシャギリシャ、ローマの各宗教など、さまざまな宗教や文化の信奉者たちが共存していた。

多文化共生のエリアであった。そこから、いわば豊穣な大乗仏教が形成されていったとみている。