インド人女性との対話①
彼女は、日本人の男性に嫁いで来日した。
東インドのベンガル州出身。バラモンの家系に生まれた。ベンガル語、ヒンディー語、英語、日本語が流暢である。
インドでは、学生時代、外国人の旅行者の通訳をしていた。
──どんなグループの通訳をしたの?印象的なのは?
「いちばんスケベなのが日本のお坊さんグループ。お坊さんだからって、とても期待してたのよ。ところが、すごくエッチで驚いたわ。当時は女子学生で20代前半でしたからね」
──ううむ。それは日本人として恥ずかしい。ブッダの悟りを開いたブッダガヤでキンキラキンの袈裟を着たお坊さんたちが、菩提樹の下でお経を読んでいたんだよね、まあちんどん屋みたいだった。同じゲストハウスにいたイギリス人から「あれはなんなんだ?」と聞かれた。「いや、日本のMonk(坊さん)なんだけどね」と言うと。「なんで、あんなド派手な衣装しているんだ?」と聞かれて、困った。
「まあ、とにかくわたしは驚きましたよ。でも、たとえば医者のグループなどが学術会議で話をすると、そのテキパキとした進め方、機敏な動きには、さすが日本と思いましたよ」
──テクノロジーはすごかったからね。当時は。いまは知らんけど。
ところで、スワルナーリさんの本を出そうという企画だよ。国際交流の助成金で、インドを紹介する本。そして、講演会。さらには、サリーの着かた教室。インドスイーツの作り方など、全部リードしてもらおうと思って。
「それ、いいね。協力しますよ」
──ありがとう。それで、場所は、ちかくの真言宗のお寺でやろうと思っている。ヒンドゥー教ともっとも近いのは、真言宗だからね。
「そうそう。しかし日本のお坊さんに仏教のことを聞いてもちっともわからない。それぞれまったく違うし。たとえば、日蓮宗と浄土真宗と創価学会なんて、それぞれまったく違う」
──そうだね。なので、そこらも含めて、仏教の源泉であるインドの哲学、死生観、ものの考え方も紹介するって本だね。ぼくがスワルナーリさんに質問して作ることになる。
「ああ、それはダメよ。だって、池谷さんは、インドのこと知りすぎているので、つまらなくなる。もっと、フツーの人の質問じゃないと。インド人ってカレーばかり食べているんでしょ?とか、インドって暑いんでしょ?とかね」
──ああ、そうだね。なので、まずはZOOMでインド入門講座をシリーズ展開しながら、フツーの人に参加して守らつて、やり取りを通して本を作るってことにしましょう。(続く)