過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

満月と三輪車

もうすぐ満月だ。すこし曇りがちの空だけど、あかりと日課のお月さま散歩にでかけた。きょうのあかりは三輪車。自分でしっかり漕いで移動していた。
「あれれ、夜なのに影があるよ」
──それはね、ほら、満月だからだよ。お月さまの光に照らされて、影ができるんだよ。
「おとうちゃん、ごごごごーって川の音がいいね」
───そうだね。いつもいつも、水が流れているんだね。いっときも休むことはないね。あかりちゃんみたいだね。
──このまま、おうちに帰ろうか。
「いやだ。もっと散歩したい」
──でも、もう寝なくちゃ。お風呂も入らなくちゃ。
「じゃあ、靴履かせて。歩いてく。ここから、お父ちゃんと競争だよ」
あかりは、三輪車を置いて走り出した。お父ちゃんも追いかけていく。
満月の空の下、三輪車は置いてきぼりだった。
画像は、小林めいき 「月夜の忘れもの」

f:id:ichirindo:20200309204751j:plain