過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

ハラルの食品加工 振り出しに戻りそう

インドネシアの家族が、ハラル食品(イスラム食)の加工を行い、全国とインドネシアなどに向けて販売をする。その加工所として、山奥の食品加工所を借りることになった。
集落の全員が合意してくれ、契約書もつくり、双方で締結した。保健所の許可もおりて、さあ本格稼働だ。
という矢先、振り出しに戻りそうな流れになっている。
-------------------
行政から「待った」がかかったらしい。その理由を、集落の契約の責任者に聞いたり、人づてに聞いたが、具体的な内容がわからない。
契約書を作成して仲介した当事者としては、現状を把握して手を打ちたいところ。
それで、役所に直接聞いていった。だが、やれ経済産業課だ、国際交流課だ、農林水産課だとか、わかりにくい。それぞれ趣旨説明をして、やっと担当がわかってやりとりできた。
--------------------
なぜダメなのか、その理由を聞いた。
施設(農村体験施設)は、国と市の補助事業で建てられた(補助率50%以上)ものである。目的は、住民が使用するものであり「他に貸すことはできない」。そのように「要項」に書いてある。
なので、他に貸すと「規定違反」となる。行政としては、管理責任を問われるので、見過ごせないということだ。
規定は変えられない。まぁ、たしかにそうだ。
--------------------
当初の設立目的は、地域住民が使用することが前提であったろう。しかし、集落の過疎高齢化が著しく、その施設は、今ではほとんど使われていない。
ハラールの食品加工は、そういった遊休施設を活用して、地元の活性化に貢献することができる。地元の農産品も購入して、利益を還元できる。さらには、地元集落の名前を使用したハラル表示も作成して、全世界のムスリムに発送しようという提案もある。
さらには、空き家があればインドネシアの若い家族、3世帯8名が移住してくる可能性もある。インドネシアのインバウンドの中継拠点になる可能性もある。
--------------------
すでに「東洋経済」が記事(集落とインドネシア家族の交流会)を掲載し、いまYahooのテレビ取材が入っている。NHKも地元新聞、朝日も取材したいという。テレビ東京が、池上彰の特番の柱の一つに取り上げたいとも連絡があった。
そうした流れを、うまく活用して、市の魅力発信につなげ、ひいては日本が、イスラム教のひろまっている国々にアピールできるいいチャンスとも思っている。
たとえば、安倍首相が中近東に歴訪する時、「ネタにしたい、いい話」ともなると思う。
「過疎の山奥にムスリムの若い家族が来てくれた。地元産品を活用して、世界にハラル食品を展開したいという流れがあります。山里の住民とうまく交流して、宗教理解、異文化理解も進んでいる」と。
--------------------
そういう背景があるが「規定では、他に貸してはいけないからダメ」ということで、おしまいになってしまう。それは、残念なこと、もったいないこと。
使われていない施設を活用して地域に活かそう、という流れがあるにもかかわらず、建物はだれにも使われず、やがては解体するしかなくなる。全国にそういう施設はたくさんあるように思う。
かくして、過去に全国の山村に作られた施設、ハコモノ(文化ホール、集会所、体験加工所、博物館、学校など)などは、過疎化によって誰も使わず、朽ち果てていく。やがて解体と。
--------------------
このことは、農林水産だけの話ではなく、国際化、過疎対策、まちなかとの交流、異文化交流、さらには市や国の広報につながることだと思う。
行政は法令遵守が基軸にある。一部のための利益供与など許されないのはわかる。しかし、山里特区というか、過疎の現実に対して、柔軟に対応していく道があってもいいのではないだろうか。
だから、「規定を変えよ」というのではない。「規定」は規定として、たとえば「市長案件」として、運用上いくらでも対応できると思うのだ。
--------------------
最悪、加工ができず、発注した真空パック器など使われず、大量の受注がキャンセルとなるかもしれない。まあ、それはそれで、縁がなかったということだ。並走して、他の施設も探すということにも動き出さねばならない。
こうして書くことで、問題が大きくなって、ますますやりにくくなるかもしれないが、ともあれ、同時進行ドキュメントで発信していく。