過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

おうちはもうないけど、あるの。宇宙の中にあるの

「ガオー、ガオー」とがんばって脅してみせた。あかりがおもしろがると思って。
でも、ちっとも面白そうな顔をしない。
「あとでお父ちゃん、あそんであげるからね」と言われた。

なので、お父ちゃんは一人でパソコンに向かって仕事する。あかりがやってきた。「ぬいぐるみごっこで遊んであげるから。うれしいでしょ」と言う。「うれしいよ、あそんでくれるの?」とお父ちゃん。

「ガオー」と脅す。すると、あかりはニコニコして「ごめんなさいは?」と要求する。すると、お父ちゃんは「ごめんなさい」と謝らなくちゃちゃいけない。なにかヘンだ。

ぬいぐるみ遊びをしていると、「ティガー(というトラのキャラ)のおうちは、なくなっちゃたの。もうないの」と言う。
──おうちがなくなっちゃったの?かわいそうだね。むかしのおうちは、どうしたんだろう。

「おうちはもうないけど、あるの。宇宙の中にあるの」。
──そうか。おうちはないんだけど、あるんだね。ないけどある、あるけどない。宇宙の中だ。

そば処の一休さんから、手打ちそばを頂いた。天ざるをつくって家族で食べていた時、突然、言い出した。
「あかりちゃんは、みんながいなくなってから、ひとりでニンジンを食べることにしたの」。
脈絡のないことばが、おもしろい。