過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「矢先」症候群

やっと時間ができて、さあこれから、というときに倒れた。定年になって、さあこれから妻と二人で温泉にでも行こうかと思っていた矢先にガンで倒れた。「矢先」症候群だ。患者と接していて、そういう人が多い▲みんな生の延長線上に死があると思っているけれども、人はつねに死を背負っているんだ▲そのように柏木哲夫先生からお聞きした。先生は、40年間にわたって2500人以上を看取ってきたホスピスや緩和ケアの草分けだ。

たしかに、「矢先症候群」ってありそう。定年になったらこれをしよう、子離れしたら、これがおわったら、あれが済んだら……というふうに、人は考える▲でも、それが終わっても、次の忙しい用事が訪れる。また次の課題がやってくる。で、結局は、思うようにはならない。そうこうしているうちに、死が訪れてしまうかもしれない。

だからやっぱり、あれこれと手間がかかる、いろいろと面倒で忙しい日々のなかで、一日一日を賢く、やれることをやっておくしかない。雑事の中で、混乱の中で、あれこれとやるべきことをやりつづける。実行していく。でないと、予期しないうちに人生が終わってしまうかもしれない▲きのう、北の湖が亡くなった。ぼくと同い年だ。

先々とのことは、なかなか思うようにならない。目標とか願いとか計画というものは、なかなか実現できない。たいせつなのは今日一日。いまここ。きょう一日、かしこくしっかりと生きよう、ということになるのかなあと思う。