過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

こんなひどい裁判官もいた

ぼくが出逢ったひどい裁判官の話。かつて制作費を支払わない出版社を相手取って、裁判を起こしたことがある。その一審の裁判官だ。▲第一回口頭弁論は、ラウンドテーブルを囲んで会議のようなスタイルであった。このとき、裁判官は法衣を着ていない。相手方は70過ぎの弁護士。こちらは素人だ。見た目では、明らかにむこうに分がある。

裁判官は、なめてかかってきた。こちらの言い分も聞かず、いきなり「こうしてモメるのは、だいたいお互いが悪いんだよ」という。「和解してはどうだ」「要求している金額の、半分で納得したらどうだ」と言ってくる▲「いや、証拠を示します。それをきちんと調べていただいて、判決を出していただきます」。そう言うと、「そんな証拠をいくらだしてきても、意味ないんだよ。そんなのはだいたい見ないから」。もう脅しだ。

裁判官がこういう態度をとるのは、意味がある。かれらは、たいへんな数の訴訟を抱え込んでいて、一つひとつ早く終わらせたい。和解なら一回で決着がつく。判決となれば、えんえんと一年もかかる。しっかり書面を読んで書証拠調べをして、法律のロジックを駆使して、書かなくちゃいけない。面倒と感じるだろう▲和解でも判決でも、処理件数は1つである。その処理件数で、裁判官の仕事は評価される。ので、和解に持ち込もうと脅したわけだ。

さすがにアタマに来た。だが、ここで裁判官と喧嘩しても、まったく勝ち目はない。なにしろ裁判官の心証次第で、判決が決まる。裁判官忌避というのをやろうか。 ICレコーダで録音して、マスコミに流してやろうかと思ったほどだ。▲おのれ、どうしてくれようかと、いろいろと思案しながら、第二回口頭弁論の日が来た。すると、あらわれた裁判官は別の人で、女性になっていた。裁判官が交替したのだ。こんなわずらわしい裁判はやってられないと、女性裁判官に押し付けたように思えた▲この裁判官が丁寧な方で、しっかりと主張を聞いてくれた。で、一審は全面勝利した。そして二審も、全面勝訴したのだった。