過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

あかりとユーザー車検に行く

──きょうは車検だけど、行くかい? たぶん、おもしろくないよ。でも、社会勉強にはなるよ。
「うん。いく」

あかりが「行く」というので、連れていった。
こないだ、譲っていただいたヴィッツユーザー車検だ。

ユーザー車検は、その制度が始まってからやっているので、合計したら10回や20回くらい体験している。まあ、慣れてはいるんだ。

ただ、書類を書いたり、あちこちの窓口に行ってお金を払ったりする作業が、なかなかの手間だ。これに30分。
車検コースに入るまで、待っている間が30分。
実際の車検のコースそのものは、20分くらい。
不合格になると、修理工場で調整してもらって再検査。それで合格すれば、車検証がもらえる。まあ、全部で3時間かなあ。
  ▽
浜松市陸運局に行く。あかりも一緒だ。
13時からのコースを予約していたが、早く着きすぎて昼休み。窓口は閉まっている。

さて、どこで時間を潰そうか。
近くに、浜松の繊維産業の展示館があったので、見に行く。
しかし、まったくつまらない。よくもつまらない。
「もう帰ろうよう」とあかりは言う。
──どうしてつまらないか。それを観察するのが目的なんだよ。

浜松市の重要産業の礎は織物にある。その展示館なのに、もったいないことだ。
お役所仕事だと、どうしてかくもつまらない展示スタイルなるのか。そこを観察する。

お役所の人は、見に来る人が多かろうが少なかろうが給料には関係ない。むしろ少ないほうがラクだろう。ということで、かたちだけの展示になる。浜松の繊維産業のことを伝えようなんて気持ちはないなぁ。「形だけはやっている」というところ。

まあ、行政が企画管理する展示館や博物館は、どこも同じ構図になる。
たとえば、銀座の近くにある消防博物館やら、九段にある昭和博物館、小石川だったかなあ、戦争で被災した人の博物館など、ものすごい一等地なのに、おそろしく見事につまらない。そんなのは数えあげればキリがない。まあ、そこは深入りしない。制度設計の問題。
 ▽
さて、時間が来たので陸運局に行く。
待っている人たちをぱっとみて、整備会社の人が5割、ブラジル人が3割かなあ。モスリム(イスラム教徒 たぷんパキスタンの人かなあ)、そしてタトゥーをしている人もいる。多国籍の現場。

「おとうちゃん、どうしてブラジルの人が多いの?」

──中古車の売買を仕事にしている人がいるってことだよ。おとうちゃんの友だちのインド人やネパール人は、中古車の売買で1億円くらい儲けたんだよ。ブラジル人も有能な人が多いよ。あかりも知っているペルー人のパチェコも中古車の売買をやっている。たいしたもんだよ。

「へええ、それはすごいね」
──だからあかりも、将来は海外で働いて仕事ができるようになるといいね。まずは外国語を覚えることだなあ。
 ▽
ユーザー車検なので一番の窓口に行く。事前にデータは登録しているので、わりと俊敏に書類は出てくる。
「13番に行って、印紙を買って、それから11番に行って、自賠責を払って、それから13番で書類の確認。それから、ここにまた来てください。

ということで、あちこちに行って書類を書いたり重量税や自賠責を払う。そしてまた一番に戻る。しかし、自賠責の期間が間違っているとかで、またやり直し。
ということで、やっとコースに行く。
 ▽
「タイヤのホイールを外してください」
と言われた。外すのがわりとたいへん。
ボンネットあけて、車台番号の確認、それからウィンカ、ハザード、ウィンドウォッシャーの確認など。

本コースに入る。
まずは、排気ガスの検査。‥‥合格。
次は時速40キロ出して、ブレーキの確認。‥‥合格。
ライトの確認。‥‥こちらは、不合格。(光軸のブレ。だいたいここで、いつも不合格)
それから、車の下回りの検査。‥‥合格。

不合格になったライトは、近くの修理工場に行って調整してもらう。2千円かかった。
それから、再検査。‥‥合格。
やっと新車検証を発行してもらえた。
 ▽
──まあ、こういうことで、おもしろくはないとおもうけれど、勉強になったかなあ。

「うん、どきどきしたよ。でも、車検が通ってよかったね」

──ユーザー車検を体験した8歳の女の子なんて、日本では一人くらいだと思うので、そこは誇りに思っていいよ。

「そんなことより、おとうちゃん。〝たこまん〟によって、美味しいお菓子を食べよう」

しかし、iPhoneを忘れたために、〝たこまん〟にたどり着けず。〝きころ〟という店とパン屋に寄って、おいしいプリンとかフランスパンを買って帰ったのだった。