過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

〈サイババの旅②〉私を見ると門が閉まる

サイババの旅②〉

サイババのアシュラムを訪ねたのは、数年後だった。
プッタパルティに着いたのは、夕方。
ゲストハウスにリュックを置いて、アシュラムに向かう。

私を見ると、アシュラムの門が閉まる。
ん? どうしてだろう?
門番のような男が聞く。
「おまえは、日本人か?」
──そうだ。
「おまえのグルはだれだ?」
──そんなこといちいち言わなくちゃいけないのか。特に私のグルなどはいない。サイババは尊敬しているけれども。

そんなやりとりをしたものの、入れてもらえなかった。
「お前は、どこに泊まっているのだ」。そう聞いてくる。
──近くのゲストハウスだ。
「では、案内しろ」と言う。一緒にゲストハウスまで行く。
その男は、ゲストハウスと宿帳を確認すると帰っていった。
  ▽
どういうことだろう。なんだ、あの態度は。前回とはずいぶんと違う対応だ。
そして、翌朝、再びアシュラムに行く。

すると、わたしを見るとまわりに10人くらいの男が集まってくる。
いろいろい質問されて、あれこれ話した。
たんなる旅であること。サイババの本はたくさん読んだこと。いろいろなアシュラムを訪ねていること。仕事はライター。

今回の旅は、いろいろなアシュラムを訪ねること。
たとえば、OSHO、オーロビンド、ラマナマハリシ、グルマイ、ババジ、ラーマクリシュナ、アンマ。そしてゴールデンテンプルやイスラムのモスクなど。
そうこうしているうちに、向こうの疑念はすこし晴れたようでアシュラムに入れてもらえた。

───ううむ、このアヤしさはなんだろう。どうして、私がこんな目に遭わなくちゃいけないのか。

アシュラムに滞在している日本人を見つけて聞いてみた。
「ああ、それはあなたは、ライフスペース高橋弘二(たかはしこうじ)の弟子に間違えられたんだと思うよ」

───ああ、あの高橋弘二自己啓発セミナーからはじまって、シャクティパット・グルとしてなにやら怪しげな団体を作っている。(後に成田ミイラ化遺体事件で有罪判決 懲役7年)

「そう、その高橋弘二は、ひとりだけ黒いローブを着て、ババのアシュラムを歩き回っていました。そして、日本に教えを伝えるためにサイババに特に委託されたと言っていたんです」

───サイババと特別つながりがあるとして、ビジネスにしている人たちがいろいろいますね。
「そう。それで、ババは彼を出入り禁止にしたんです」

───ほう。それで?
「そしたら、高橋弘二の弟子が、“そんなことするなら、このアシュラムを爆破するぞ”と言ったらしいです。
───それはとんでもない。

「なので、ひとりでやってくるアヤしげな日本人は、みんな高橋弘二の弟子に見える。そしてアシュラムを破壊するためにやってきたと、見間違えられたんでしょう」
───なるほど、そういうことですか。

グルのいるこうしたフィールドに来ると、過去のカルマが噴出するというか、一気にその人の背負っていたものが出てくるってことはある。
出てきた時点で「それはそれ」として流していけばいい。
そんなことは、インドの旅で慣れていたので、そんものかなあということであった。