過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

その後の「すごい90代」

テレビ東京から電話あり。「ナゼそこ?」というバラエティ番組のディレクターからだ。
「本(『過疎の山里に暮らす普通なのに普通じゃないすごい90代』すばる舎刊)を読みました。本の中に登場する尾上さんは101歳、まだお元気で商店を経営していますか?」
──残念ながら三ヶ月前に店は閉じました。息子さんが店を続けても赤字ばかりということで、閉店になりました。
 「お元気で経営されていたら番組に登場してもらおうと思ったのですが。しかし、まだお元気でしょうか?」
──私が会ったのは三ヶ月前ですが、そのときは元気でしたよ。デイサービスには週一に通っていました。ひとりで畑仕事もされていたし、洗濯物も自分で干したりしていました。
「テレビ的には、商店が続いていたらおもしろいと思ったのですが----—」
──そうですね。暗算も得意だし、仕入れもお客さんとの対応も、一人ですべてやっていましたからね。しかし、100歳を超えているので、いつなんどきってことはありますね。あの本を出版してから、亡くなった人は三人。施設に入った方は二人ですからね。
「本の中で、ちぎり絵を創作している中田さんはお元気ですか?」
──中田さんも、半年前に、施設に入りました。頭はしっかりしているんですけど、なにしろ96歳でひとり暮らし。あんな急坂の森のなかに暮らしているので、子どもさんたちは心配で、施設に入ってもらおうということになりました。
「そうですか------」
  ▽
そんなことで、尾上さんの息子さんに電話してみた。
「おおひさしぶり。おふくろは、残念ながら、転倒して大腿部骨折になった。入院しているうちに、脈拍は29ということで、酸素マスク状態。いつなんどきってところだよ」
──うわあ、それはたいへん。しかし、おかあさんお見事な生き方ですよね。
「うん。あのまま店を閉じなければ、転倒しなかったかもしれない。仕事が生きがいだったからね」
  ▽
春野の太極拳のグループの幹事をしている。はじまったばかりで、11名の会員ながら、足の骨折やら、捻挫やらで休む人が出てきた。
前回、参加者の方に「鈴木末吉さんは、施設に入ったんですよね?」と聞いたら、「戻ってきたようですよ」ということを聞いたので、今朝、末吉さんに電話してみた。
「だれ?------ああ、池谷さんか。10月末にもどってきたよ。あんなところにいたら、上げ膳据え膳で、体も頭もまいってしまうよ。それで、なんとか出てきた。どうせ死ぬなら、施設で死ぬより一人暮らしでも自分の家がいいんだ」
──それは、よかったよかった。しかし、いまいくつになるんでしたっけ?
「もうすぐ94だよ。あと一年、もつかなあ」
──その元気さと頭の回転では、108歳まで生きられると思いますよ。
「なにをいっているんだ。もう先はないよ。施設から帰ってきたら、ニホンミツバチも、みんないなくなってしまった。飼っていたアマゴもみんな死んでしまった」
──末吉さんのお元気さが、みんなの希望ですよ。またお訪ねしますね。
「はいよ。いつでも、遊びにおいで」