「過疎の山里に暮らす普通なのに普通じゃないすごい90代」すばる舎からの出版がすすんでいる。
92〜99歳の方9人、医療と買い物支援70代の方2人、計11名の方を取材した本だ。ほとんどがこの春野町の私の親しい人たちだ。
10月に発刊。初版は7,000部という。
10月の初頭に出版社の編集の方と取材先にお礼の訪問の予定。
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この本ができるまでの経緯。
静岡県の「健康長寿財団」というところの特派員を2年間、務めた。身近な元気なお年寄りの生き方を取材して原稿にする仕事。
交通費込みで月に報酬1万5千円。大した報酬じゃないけれど、おもしろい人に出会って文章にするのは楽しかった。
文章は「健康長寿財団」のホームページに掲載される。あるいは冊子になった。
しかしまあ、ホームページのアクセスは少ないし、冊子などほとんど読まれることと思っていた。期待すらしていなかった。
それが、たまたま「すばる舎」の編集者の目に止まった。
以下のメールをいただいたのが一年前の2021年5月12日。
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はじめまして。
突然のご連絡大変失礼いたします。
すばる舎編集部の水沼三佳子と申します。
しずおか健康長寿財団の池谷様の記事、またブログを拝見し、
宮脇眞一様についてお尋ねしたく、ご連絡差し上げました。
90代でお元気に一人暮らしされ、朗らかに、無欲で、人の役に立つことを楽しんでしている……池谷様の記事にある宮脇様の生き方に、非常に感銘を受けました。
https://ichirindo.hatenablog.com/entry/2019/02/13/200420
宮脇様をぜひ著者として、本を作らせていただけないか。
『93歳、過疎の山里で「人様のお役に立つ」生き方』(仮)
といったテーマで考えております。
(中略)
「人生の師」である高齢の人徳者から、生き方の知恵を授かりたい─そうしたニーズが、今非常に高いように思います。
宮脇様の生き方は、「長い老後、どう生きたらいいか」と悩むシニア層、さらにはその下の世代にも大きな勇気を与えてくださるものです。
もしよろしければ、ぜひとも宮脇様におつなぎいただけないでしょうか。
さらに、誠に図々しいお願いで恐縮ですが、
宮脇様のお人柄、「里山の鉄人」のすごさを誰よりもご存じなのは池谷様と思います。
池谷様に取材執筆をしていただくのが最上の選択、
ぜひともお力をお借りできたら……と、勝手ながら願っております。
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90代の元気なお年寄りなら、この山里にたくさん知っているので、10人くらい訪ねて本にするというのなら可能性がありそう。そう返答した。編集者からは「それでいきましょう」と回答をもらった。
ぼくが文を書き上げて、編集者が東京から来てくれて、同行。内山さんが写真撮影してくれた。
ぼくは、瞬発的に一気に文章は書き上げる。けれども、少し休むと、他にエネルギーが向いてしまうという特性がある。
それに、自分の生き方、自分の思想の本ではないので、どうしても、あとまわしになる。
なんどか止まっていた。そこを編集者の水沼三佳子さんが、叱咤激励、鞭打ってくれて、どうにかこうにか形になった。一年余かかったことになる。
ごちゃごちゃになっていた文章も、きれいに構成してくれている。伴走してくれる編集者というのは、まことにありがたい。
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まあ、むかしとちがって本は売れない時代。まさに構造不況業種。しかし、やはり本という存在は、これからも影響力は大きい。
売れるか売れないか、わからない。内容もたいせつだが、タイトル、カバーデザイン、発行の時期、出版社の広報と販売力、いろいろいな要素が加味して動いていく。
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この10年余、編集の仕事とは離れていた。
東京では、仏教書と医学書の編集と執筆で暮らしていたのだった。合間に、ちょいちょいとインドに出かけたりして(累計13回も)、たいして仕事はしていなかった。
東京暮らしは家賃などに金がかかる。そうだ田舎暮らししよう、とひらめいたのが11年前。それで春野に移住したのだった。
山里に暮らしてみると、編集の志事よりも、山里暮らしの魅力発信のほうがおもしろい。田んぼもはじめた。NPO法人も立ち上げた。
そのうち、介護施設も経営するようになった。しかし、人件費やら事務処理がたいへん。なにより子育て(いま、娘は7つ。しかも学校に行かず宣言発令中)にエネルギーと時間をとられる。
妻の病もあって、手術と療養を機に介護施設は休業することにした。そのうち、このまま廃業しそうだな……。
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そういうなかでの出版の事業が再開したことになる。すばる舎の仕事がきっかけに、信貴山真言宗、吉野の金峯山寺、佼成出版社、anemoneと仕事をいただけるようになってきた。
PHP社から出していた「死んだらおしまい、ではなかった」は51刷の累計15万部となったぞ。ありがたいこと。
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ということで、出版のほうに舵を切った。
文章を書くのは好きだし、飽きっぽいわたしが唯一続いているのは、毎日、文章を発信すること。
それが形になって、収益があって、そのことで暮らしていけたら、まことにありがたいこと。そんな可能性が開けるのかもしれない。いやそれよりも、まったく違う世界があらわれるのかもしれない。
先のわからない人生をいつも船出している。