過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

引きこもり10年の若者が、いかに脱出したか

「あかりちゃんですか?」

そう声をかけられることが多い。Facebookなどであかりの露出度が高いので、あかりの顔ーみて「もしかして……」と声をかけてくださる。

昨日は、となり町のイベント露天の店であかりとフルーツパフェを食べていたら、通りがかりの人に声をかけられた。

その方は、ぼくのFacebookをいつも読んでくださっていた。

「ああ、やっぱり。春野の池谷さんですか。いつも読ませてもらっています」
──それはそれは、ありがとうございます。
 ▽
「お会いして嬉しいです。わたしの体験を話してもいいですか?」
──はい、お聞かせください。

「じつはうちの娘が、中学に入った頃から不登校、以来、10年間の引きこもり。」
──10年とは、すごいですね。いちばん溌剌とものごとを吸収できる時代に、部屋の中に閉じこもりっぱなしはもったいないし、可愛そうですよね。

「そうなんです。親としては、つらくてつらくて。そうした親同士の集いに出たり、悩んで悩んでどうなることかといつも不安でした。」
──これがいいという答えがないですからね。

「ところが、ある時、転機が来ました。」
──ほう。

「近所の娘さんが、オーストラリアにホームステイするということを聞きました。で、うちの娘にそれを話したら。〝わたしも行ってみたい〟というのです。驚きました。それで、娘をオーストラリアに行かせたんですよ」

──うわあ、それは大転換でしたね。それから、どうなったんですか?

「帰国したら、もうすっかりポジティブになっていましてね。しっかりと勉強もはじめて、金沢大学の医学部に就職することになったんです。

──ほええ。それはすごい。しかも、金沢とは歴史のある文化の深いところ。日本海も美しいし。すばらしい」

「そんな体験もして、私は子どものための生きていくための塾みたいなことをやろうとおもっているんです」
 ▽
そんな出会いがあった。

じつは、ぼくも引きこもり10年の青年をわがやに泊めたことがある。友人がその青年を引きこもりから脱出させて、「山里にいってみないか」ということで連れてきた。

さて、どうすごしてもらおうか。田舎のドライブじゃつまらないは。
そうだ、ドラム缶風呂がいいかも。

薪を割って、水を汲んで、で薪で風呂を沸かして入る。全部自分でやってみる。
彼は、薪割りを集中してやっていた。

「いままで10年間、ぼくは自己否定ばかりしてきました。自分はダメだ、ダメだと。自己評価がいつもすごく低いんです。ところが、薪割りをやってみて、気持ちよくパーンパーンと割れる。自分もできるじゃないか、と。それが、嬉しくて嬉しくて」

そんなことを語ってくれた。