過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

浄土真宗のお坊さんとの対話⑥西本願寺は『宗本分離』

浄土真宗のお坊さんとの対話⑥

西本願寺浄土真宗本願寺派、以下、西本願寺という)の門主は、天皇陛下みたいなもので、門徒にしてみたら天皇陛下よりもありがたい。いわば生き神様です。それが、現場まで下りてきて、ひとりひとりに声をかける。団体参拝に檀家さんたちと本山に行くと、教区の「マイクロバス」に乗り、職員と同じようにおいでになる。高級車などに乗ってこない」

──それは門徒にしてみたら、大感激ですね。

「そうなんです。いわゆる大教団の開祖とかトップは、奥にひっそりいて儀式だけ出てくる。たとえば、真如苑とかね。それが、お西の門主は、じきじきに出てきてくださる。かつての創価学会池田大作氏みたいなものです。」

──しかも、親鸞天皇家の血統を継ぐ、まことに雅やかでやんごとなきお方ですからね。それがもう引退してしまった。前門主がいま第一線におられたら、今回のような「新領解文」の問題は起きなかったということでしょうね。

「そう思いますよ。そして、今回の問題は、親鸞聖人の教義との逸脱もありますが、政治的な色彩があるとみています。」

──ほぅ、どんなことですか。

「それは、やはり金なんですね。西本願寺は『宗本分離』といいまして、宗派と本山は分けられているんですね。どういうことかというと、多くの既成教団は、本山は資金力がない。そのため、末寺に「課金」といって、上納金、冥加金が課せられます。寺格とか檀家数によって等級が分けられます。」

ところが、西本願寺は末寺に頼らなくてもいいだけの資金力があります。本山のお金を末寺に回せるくらいです。

──なるほど。それでわかりました。じつは、インドの洞窟で修行していた浄土真宗お坊さんの友人がいましてね。かれが、都市開教したいというので、ぼくはいわば檀家総代役みたいな立場で一緒に築地本願寺に相談に行ったことがあります。

すると、いまあいているエリアは、飯能市あたりで、そこなら応援できる、と。
それで、本山の応援というのは、給与は当時で毎月15万円余、そして新寺建立の際には多額の寄付と、資金の貸し出しをしてくれるんですね。おどろきました。そんなことをしてくれる宗派は、全仏教界だけでも、西本願寺だけですからね。

「そんなことですよ。なにしろ資金力が桁外れにあるんです。それで本山のトップ門主でいわば天皇陛下宮内庁長官みたいな立場は執行長(しつぎょうちょう)といいます。儀式や行事を司る。そして、西本願寺の宗団は宗務総長です。いわば、内閣総理大臣です。

今回の問題は、それらの執行長と宗務総長の主流派と、全国の末寺の非主流派の政治的な争いとも見ています。」

──なるほど。おもしろいです。末寺が真剣に本山を追い込んでいくと、本山からの資金援助はなくなる。お金がないとつらいので、やはり黙らざるをえない。やがて意気消沈して、うやむやになっていくかもしれませんね。

次は、「新領解文」が親鸞の教えと逸脱しているかどうかをみていきたいと思います。(続く)