過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

「石井紘基が暗殺された」 ちょうど20年前のきょう、10月25日だ。

石井紘基が暗殺された」
ちょうど20年前のきょう、10月25日だ。

それを聞いたのは世田谷にある国士舘大学のキャンパスだった。当時ぼくは大学の広報の仕事を受けていた。学生とともに南インドの島で家づくりのボランティア活動したこともある。

石井が暗殺されたのは世田谷の自宅、国士舘大も世田谷キャンパス。ぼくは現場のかなり近くにいたわけだ。

しかし、石井紘基については全く知らなかった。たんなる利権や遺恨がらみによる事件程度にしか思っていなかった。近頃になって、石井紘基の本を読んでみたり映像に接すると、すごい政治家であったことがわかってきた。

本を少しずつ読んでいくと、その凄さの一端が分かりつつある。明石市の泉市長(子育て支援などで魅力的な都市づくりに成功している)は、「石井さんの遺志を継ぐべく、国会議員となった」とツイートしている。
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石井紘基は何に切り込んでいったのか。
メスを入れようとしていたところの要旨を、以下ざっくりとまとめてみた。

①国家の予算は国会の予算審議で決められる。「一般会計」という。どこに道路を作る、社会福祉はどうする、文教費はどうの、通貨発行はどうのという話である。

立法府である国会の仕事は、法律を作ること、予算を議決することにある。立法府によって予算が決められて、国が動く。予算が成立しなければ、行政府は仕事ができない。マスコミで報道される「予算」は、ほとんどが「一般会計」だ。

③しかし「一般会計」のほかに、「特別会計」というものがある。その規模は大きい。2.5倍以上もある。
「一般会計」の歳出・歳入総額は約80兆円(税収+新規国債)に対し、「特別会計」の歳出総額は、約400兆円。「一般会計」の5倍。ただし「重複分」を除くと、純歳出額は約200兆円。

特別会計は、行政の便利なポケット。かつて、塩川正十郎財務大臣はこう言った。「「母屋(一般会計)は雑炊でがまんしているのに離れですき焼き」と。国会で審議されないでどんどん使われている、という現実がある。

④「特別会計」は、特殊法人に流れているのではないか。「特別会計」は国会で審議されないので、歯止めがかかっていない。これを解明していかないと健全な国家財政の運営はできなくなるのだ、と。これを、石井は調査していった。そして、暗殺されたのであった。
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以下は、池谷の思い立ったところである。

①膨大な「特別会計」がなぜ特殊法人に流れるようになっているのか。

②日本の国は長く一党支配が続いて、中身をチェックできなくなっている。表舞台は総理や内閣、国会議員たちだが、その実、国家官僚が動かしている。

たとえば「閣議決定」で、すべてが決まっていく。「集団的自衛権」や「安倍晋三国葬」とか、重要なことが国会審議を経ないで決まっていく。
こうした「閣議決定」は、大臣が論議して決めるわけではない。官僚が根回しして作った書類に、大臣は判子を押すだけ。官僚がすべてを決めているのだ。

③東大の法学部を出たような優秀な人が官僚になっている。文書作成、法案作成や予算管理の処理能力は長けている。
国会の質疑応答など、総理や大臣が答弁する原稿は、事前に提出された野党の質問書に対して、官僚が答弁を作成している。総理や大臣は、官僚の作文を読んでいるだけ。

④官僚のトップが事務次官である。その事務次官候補以外の同期は、40を過ぎた頃になると「肩たたき」にあう。能力の似たレベルの者がたくさんいると組織としての運営が難しくなるからだろう。肩たたきにあった者たちは、どこに行くのか。
ほとんどが特殊法人に行く。それを「天下り」という。

特殊法人はたくさんある。公団、公社、事業団、特殊銀行、金庫、公庫、特殊会社など。さらにその先にもある。どれくらいあるのかわからない。

官僚の天下りは、枢要なポストに行く。年収1500万円とか、2000万円とかもらう。さらに、数年そこそこいて、退職金を数千万もらう。そして、次の特殊法人に行く。それを繰り返していく。特殊法人のほうは、官僚とのパイプが太くなるので、資金の流入が増えてありがたい。

⑥かつて、林野庁特殊法人の理事長の自分史を作ったことがある。ゲラを持って霞が関を訪ねたことがある。50階くらいのビル。一階にある社名のリストを見たら、ほとんどすべてが林野庁関係の特殊法人であった。

その法人は、全国で橋をつくるときに、かならず橋の名前のプレートを装着する。それを一手に引き受けて制作する会社であった。

⑦官僚は、若いときは仕事がハードだ。深夜残業、ときには徹夜して国会の答弁書を作成する。給料にはあわないだろう。しかしこうして、ある年代から悠々の人生となる。

だから優秀な人は東大の法学部を出てて官僚になり、できれば大蔵省とか通産省とかそういうポストについて国家経済を動かそうと思う。そして事務次官になって政界に行く。それができなくて、特殊法人に天下って悠々とした人生を送るということになる。

⑧歴史的な背景としては、大東亜戦争に敗北した日本は、アメリカの占領軍に支配される。占領軍は間接統治をした。そのためには、官僚機構を残して日本を支配していく。その代表が、岸信介である。岸はA級戦犯で裁かれるところ、巣鴨プリズンから出されて、やがて総理となる。日米安保条約を結ぶ。

アメリカによる日本統治は、いまも続いている。日米地位協定があり、日米合同委員会がある。日本は植民地としてアメリカの政策を押し付けられ、官僚がかれらの言うことを聞きながら、国家を動かしていくことになる。政治家はパペットのようなもの。

⑩総理大臣といえども、この辺に逆らうとスキャンダルが暴かれてマスコミに追求されて退陣させられる。その辺の構造を見ていかないと日本という国の本当の自律性・独立性はありえない。

以上、まことにざっくりと書いた。考え違いもあると思う。ご指摘いただけれれば、さらに探求していきたい。