過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

風力発電ができるって?

「池谷さん。聞いてる?熊森協会が立木トラストで人工林を伐採して、雑木を育てている。その近くで風力発電をつくるんだって」
──ええ?そんな話があるの。こないだ見に行った春野の山奥だよね。風力発電は、いろいろ生態系にも影響を与えるかもしれないね。

「そうなのよ。それで、反対運動を起こしたいんだけれど。池谷さんに力を貸してもらいたいの」
──まだ実態がわからないので、なんともいえないけれど、住民運動でやめさせた事例ってのはあるよ。

「そうなの?そんなことができるの」
──まだ、撤退したわけじゃないけど、くんまの集落では風力発電に反対運動が起きて、住民の合意が得られなくて、業者が諦めたと聞いている。
また、これは風力じゃないけど、巨大なごみ焼却施設をつくる計画があって、市長と業者が契約しちゃった。それを、住民投票の条例を作って、住民投票で撤退させた事例がある。御前崎市の例だよ。ぼくの友人が先頭に立ってやってた。

「そういう人がいるのは、心強いわ」
──でも、くんまも御前崎も、暮らしの近くにできる施設ってことで住民意識が高まった。でも、今回は山奥の風力発電。日常の暮らしとは遠いので、みんな無関心だと思うなあ。それに、そもそも原発と違って、風力発電は悪いと思われてないし。地球温暖化対策推進法ってのができて、自然エネルギーの開発はどんどんすすむ。

「でも、山を崩したり自然破壊になると思うわ。そして風力発電の振動は、動物たちにも大きな影響があると思うの」

──うん、たしかにそうかもしれない。でも、そこは春野でも遠くの山だから、みんな無関心でしょう。むしろ、土建業者は仕事になるから大歓迎ってことになりそう。

「そうしたことを一つ許してしまうと、もう歯止めがかからない。次々と、いろいろな施設ができていく。しまいには、核の処理施設ができても、みんな無関心になりそう。

──山が外資に売られ、土地が中国人に買われ、水道が民営化されてフランスの会社に買われても、みんな無関心。
そもそもみんなテレビ漬け。テレビでやってななければ、まったく知らない。テレビでは、芸能人の不倫とか、大相撲とか野球とか、お笑いとか、どこそこのラーメンが美味しいとか、そんなことばかりみたい。ワクチンによる死亡事例など、ほとんど伝えないしね」

「池谷さん、それでいいと思っているの?」
──思ってないけど、どうしようもないよね。がんばって運動起こす元気も時間もお金もない。自分の生活防衛に精一杯。まあ、せめて子育てネットワークを作り上げたいというのが目下の課題。そこに集中していくだけ。

「たしかに、わかる。でも、わたしはがんばるつもり。それでないと、生きている甲斐がないもの」
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そんな話を朝、電話でした。
この方はSさんという。

たんなる運動家ではなくて、人工林を広葉樹の森にしようと、これまで、無償で3,000本くらいの木を切ってきた。しかも50代の女性である。

そして、捨てられてみじしめな年老いた犬や猫をみつけれては、自分のところで死ぬまで世話している。そのために、山奥に引っ越してきた方だ。うちのラン(甲斐犬)が子供の頃、山奥で行方不明になったとき、一所懸命に探してくれた方だ。それが縁でのつながりだ。