過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

立証責任について

民事訴訟は、時間がかかる。かるく一年余はかかる。粘りと集中力が必要。こちらは弁護士を使わない本人訴訟だから、勉強しながらで、かなりエネルギーが要る。

「そんなのもうやめにして、人生は短いんだから、もっとクリエイティブなことに集中したほうがいい」と友人に言われる。

まあそれはそうだ。しかし始まってしまったゲームみたいなものだから、決着つけるまで諦めない。
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問題は「証拠」。相手は限りなくアヤしい。けれど、アヤしいという「事実」を裏付ける証拠がないと勝てない。証拠がなくとも、陳述してくれる証人がいればいいんだけれど、それも難しい。

ちゃんと請求書や領収書や入出金の記録をしめす通帳などがあれば、証拠として事実認定できるが、相手の通帳などを開示させるのは難しい。

裁判所に「調査嘱託」という手続を申し立てると、裁判所が銀行など第三者に対して調査を命じられる。しかし、口座の特定やら難しい、手間がかかる。
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そもそも、「立証責任」は原告(訴えたほう)にあるわけだ。それはそうだよね。

「あなたは、これを盗んだでしょう。盗んだに違いない。きっとそうだ。だから返せ」という訴訟を起こした時、相手(被告)は、「そんなことはしていない。そういうなら証拠を示せ」ということになる。
「いや、証拠はない。しかし、それは確かなんだ。そちらのほうで、盗んでいない証拠を示せ」というのは無理があるわけだ。

なのでこちらは、一つ一つ、「これはどうした」「この件はどうした」と聞いていく。すると相手は「これはこれに使った。ああした、こうした」と返してくる。

相手の説明(弁護士つかっている)には、かならず「矛盾」が出てくる。「合理性を欠いたもの」が出てくる。

そこを衝いていくという戦術をとっているわけだ。それいま、じっくりと整理して分析しているところ。表にしてみたり、周辺の証拠を集めて整理してみたり。
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てなことで、いま係争中の裁判は、裁判官から「もうそろそろ和解してはどうか、相手から和解金の提示もある。これ以上の裁判は、お互いの消耗になるだけ」と言われている。

しかし、こちらは和解しないつもり。裁判官から、回答を出せと言われている期日に「和解しない」という理由書を書いて送った。

細かいことは、ここでは伏してしているが、「立証責任」について総論で次のように書いた。
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「立証責任は原告にある」と裁判官のお示しがありました。原告に立証が難しいのはもとよりです。

しかし、被告の説明には、かなり不合理かつ矛盾するものがみられるゆえに、かんたんに退くわけにはいきません。

これ以上のやりとりは、双方が疲弊・消耗するだけという高所からの見方もあるかと思いますが、原告は「事実」を明らかにしていきたいので、裁判の継続を求めます。

立証責任は、請求者(原告)が負うということは理解できます。
民法七〇三条の規定に基づき不当利得の返還を請求する者は、利得者が“法律上ノ原因ナクシテ”当該利得をしたとの事実を主張・立証すべき責任を負っているものと解すべきである」(最高裁昭和59年12月21日判決)

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しかし、次のような判例もあるわけで、そこにひとつの可能性を見出しています。

「通帳・印鑑やキャッシュカードを管理していた実態が存在する場合には、より一層出金した現金の使途の状況を把握できてしかるべき立場にある」とした上で、「被告が亡きAの預貯金を管理する立場にあったと認められる場合には、被告の側から出金の経緯や使途に関する相応の合理的な説明を伴う具体的な反証がない限り、被告が当該出金額を法律上の原因なく利得して亡きAに損失を与えたと推認するのが相当である。」(東京地裁令和2年10月22日判決)

今回の事件は、通帳、キャッシュカードなどの預貯金の管理はすべて被告が行っており、そして頻繁かつ多額に引き出しております。その使途は、引き出した被告が最もよく知っているはずです。

裁判官は、「証拠との距離が近い者が、証拠を出すのが適当である」と口頭弁論において、おっしゃっていたことを記憶しています。

被告は、被相続人の預貯金を管理しており、その使途を最もよく把握できる立場にいたわけです。そこには、準委任契約(民法656条)又は事務管理民法697条)の関係が成立しており、その報告義務があります(民法645条、701条)。

ゆえに、被告は資金使途をできる限り明らかにすべきであり、立証責任は、原告側のみではなく、被告にもあると考えます。