過疎の山里・春野町で暮らす

山里暮らしの日々を綴る/いちりん堂/NPO 法人 楽舎

買い物代行サービス 便利屋「猿ちゃん」

うちの施設には、買い物代行サービスの便利屋「猿ちゃん」(猿田光里さん77歳)が毎週来てくれる。
春野町に移住して27年。「便利屋」という仕事を始めて、18年。いま固定客は120軒ほど。ほとんどが80過ぎの高齢者だ。ひとり暮らしのお客が8割。そのなかでも女性客は8割。
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山里暮らしは、買い物が不便。高齢になると、歩いて行けない。なにより過疎地の山里には、もう店そのものがない。
「猿ちゃん」は、山あいに住むお年寄りを訪ね、パンや菓子、惣菜、野菜などの食品や日用品を届けている。山道は細くて急峻。なので、4輪駆動の軽のワンボックスカー。玄関先まで行き、食料品や日用品を運んでそこで店を開く。
18年も山里の一軒一軒を訪ねている。お年寄りの状態をよく知っている。よき相談役、話し相手に。週に一度、訪ねてくる猿ちゃんを、心から待っているお年寄りが、たくさんいる。見守り支援みたいな役割でもある。
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ところで、山里のお年寄りは元気だ。どうしてなのだろうか。
大きいのはやはり自然環境。おいしい空気。きれいな水。そして、若いときからの鍛え方が違う。小さい頃から学校に通うにも山道も一時間も二時間も歩いて通ったり、井戸水から水を汲んだり、畑仕事の手伝い、山仕事の手伝い。暮らしの中に、体を強靭にしていく要素がある。
だが、日本全国どこもそうだが、女性のほうが元気だ。
猿ちゃんに聞いてみた。
「女性のほうは、立ち話をしたり、料理の仕方を教え合ったり、日々、工夫していますね。男性のほうは、お互いにおしゃべりしない。無駄話しない。山里の男性は特に朴訥でぶっきらぼう。なので孤立していくところがあるように思います」。
「動けるうちは、働き続ける。現役で仕事を続けられることは、なによりありがたい。人の役に立っていることがありがたい。
いまの世界、ますます悪い方向に行くような気がしている。しかし、いったいどんな世の中になっていくのか。それを、しかとこの目で見届けて死んでいく」。
猿ちゃんと話していつもお互い納得するのは、そこだ。

 

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